執筆者:動物往診+在宅ケアサービス にくきゅう 院長 立石 絵美 「東洋医学」と聞くとなんだか難しい言葉に聞こえますが、「鍼・お灸・漢方薬」と分けて考えるとわかりやすいでしょうか。 西洋医学では一つの症状に対して1つの薬剤を使用することが多く行われます。(もちろん例外もあります) これに対し、東洋医学では表面に表れている症状と、原因になっている体質と両方を見極め、どちらの治療も同時にケアしていく、という考え方に基づいて治療を行います。 心臓が悪くなると心臓の薬、肝臓が悪くなると肝臓の薬、というように、年齢を重ねると次々に薬の処方が増えていきますが、そのような状態になってしまった根本的な原因は、実は同じ体質の変化から来ていることも少なくありません。 例えば「下痢」という症状ひとつを見ても、若くて健康体の子の急性の下痢と、食が細く痩せ気味で震えている子の慢性の下痢では、同じ「下痢止め薬」で治療する、という考え方で本当に良くなるのでしょうか? 東洋医学ではこれを「同病異治」と言います。つまり、症状が同じでも、それが起こった原因は異なるため、違う処方が必要になるのです。 仮に同じ薬を使う場合でも、その子の体質や状態によって処方の量を変えることもあります。 クローン技術で作成された動物でないかぎり、1頭1頭は違う個体であり、体質も性格も薬に対する反応も異なります。ですので、その子の状態だけで無く体質や性格、場合によっては毛色や誕生日、家庭環境などを総合的に判断して診断と治療を行う、これが東洋医学の特徴です。このような理由から、東洋医学は「オーダーメイドの治療」と言われます。 また、身体は食べたもので作られます。当然のことですが、これを意識して毎日の食事を用意している飼い主さんはごく少数です。毎日同じペットフードを与え、時々オヤツや人の食べ物を与える、という方がほとんどだと思います。 「獣医さんでこのフードを与えるように言われたので」と処方食を長期間続けている子も多く見かけます。薬の処方と同じように、1頭1頭体質が違うのに、同じ病気だから同じフードを何年も与え続ける、これが本当に健康に良いと思いますか? 実は漢方薬の材料になっている生薬と普段私たちが食べている食材には似たような効能を持つものが多くあります。 生まれ持った体質の他に、身体を作るのは食べ物です。旬の食材はその季節に合った特徴や栄養素を持っています。いつものフードに季節や体質に合った食材をプラスすることで身体を整える手助けができます。完全な手作り食はハードルが高いですが、できることから始めてみてはいかがでしょうか。 食事の相談は動物病院では時間がかかるために倦厭されがちです。実際に与えている食事を確認しながら、他の患者さんに遠慮せずに相談ができるのが往診のメリットです。 病気ではなくても往診を活用して、大切な家族の健康維持を考えるきっかけになれば嬉しいです。
執筆者:ほしのどうぶつクリニック 院長 星野 浩子 「動物にも鍼灸治療があるのですか?」と質問されることがよくあります この10年ほどで動物の東洋医学的な治療を行える獣医師が増えてきました。 近年、ご家庭で飼育される犬や猫などの高齢化が進むとともに、心臓病、腎臓病、肝胆疾患、消化器疾患、関節疾患、ガンなど多くの疾患に悩まされることも増えています。 その原因には遺伝的な問題、毎日食べているフードに含まれる添加物や酸化、化学物質への暴露、ストレスなど様々な要因が絡み合っています。 動物の東洋医学ではハリやお灸、マッサージや食養生、漢方薬治療で動物が本来持っている自然治癒力を高め、病気になりにくい身体づくりを目指します。 それには日ごろからのケアが大事になってきます。往診ではまだ病気ではないけれど、健康な体づくりをしたい(未病治)、今病気があるが治癒力を高めたい、お薬を減らしたい、手作りごはんで健康を取り戻してゆきたいなどのご要望にお応えしています。 鍼灸治療や食養生指導、おうちでのお灸の仕方や環境改善などへのアドバイスを行うことで、おうちケアをより充実させてゆくお手伝いをしています。特にお灸は身体の痛みをとり、血流も良くなり、ストレス軽減につながります。定期的なケアで病気になりにくい身体づくりを目指しています。
執筆者:よつば動物病院 院長 武波 直樹 人と同じように、犬も猫も熱中症はとても危険な病気です。ある調査では熱中症が一番多いのは6月で次いで5月、7月と続いています。理由としては、この時期はまだ暑さに慣れていないのでより低い気温で発症しやすいということと、本格的に暑くなり始めた8月、9月は飼主さんが十分に気を付けているので発症しにくいからだと言われています。 また散歩や外出時に熱中症になることは想像しやすいですが、室内にいるときに犬も猫も熱中症の症状が出ることが多いと言われています。 熱中症になると体温が上がるので、犬だとハアハアと呼吸が早くなります。猫だとハアハアと口を開けて呼吸しないこともありますが、犬も猫もぐったりと元気がなくなり、息苦しそうにすることが多く、よだれがいつも以上に出ることもあります。 そうなったときに動物病院に連絡することはもちろんなのですが、対処法として常温の水で体を濡らすのが有効です。スプレーで体の表面を濡らしたり、濡れたタオルで体を覆って扇風機で送風したりし、気化熱を利用して徐々に冷却することが有効です。冷水を使うと表面の血管が収縮して温度の高い血液が中にこもってしまい体温がなかなか下がらないので注意が必要です。大切なことなのでもう一度言いますが、『常温の水』です。保冷剤を使う場合はタオルで包み、冷たくても収縮しない太い血管の走っている首元、脇の下、太ももの付け根を冷やしてあげましょう。 熱中症から大切な家族を守るために、ぜひ頭の片隅に留めておいてください。
執筆者:虹の橋どうぶつ病院 院長 鈴木 愛弥 猫ちゃんより通院がしやすいわんちゃんはターミナルケアでの往診が多いと思われるかもしれません。しかし予防や定期健診も同様に多い依頼です。日々の健康管理に往診を役立てている子をご紹介します。写真は14歳のヨークシャテリアのあめちゃん(仮名)。心臓病のため血圧のお薬を飲んでいます。かかりつけの病院はあるが真夏の外出が心配なので往診で薬の処方と爪切りを、という依頼でした。 ちなみに病院では大暴れして先生や看護師さんを困らせてしまうんです、とのこと。確かに、あめちゃんは飼い主さんに抱っこされていても激しく動いてしまい爪切りがとっても大変でした。そこで、おやつを食べるのに集中している間に爪切りと足裏のバリカンをやる作戦に。毎回、飼い主さん2人+獣医師の3人がかりですが、お手入れがおうちでストレスなくでき(ついでにおやつも食べられて)、飼い主さんもあめちゃんも大変喜んでくださいました! また、往診では落ち着いて検査を受けられることもメリットの一つです。心拍数や血圧を測るときに緊張していると数値が高く出てしまうのですが、自宅でリラックスしている時に測れるので、病院内よりも正確に測定できます。暑い季節だけ往診でということだったのですが、以来、毎月のお手入れと健診をご自宅で行っています。 このようにかかりつけ動物病院と往診を併用することで、通院の負担を減らし、病気の早期発見にも役立つと考えています。少しでも気になることがあれば、まずはワクチン接種や健診などで往診獣医師にご相談ください。
執筆者:ワンニャンモバイルクリニック 院長 結城 真浩 現在、3歳以上の犬猫の8割が歯周病になっていると言われています。歯磨きなどのデンタルケアが大事なのはわかるけど、口を触らせない、嫌がるから毎日やるのはしんどいなどの理由から続かないことが多いと思います。 歯ブラシを使った歯磨きはデンタルケアのゴールデンスタンダードで間違いはありません。しかし、嫌がる我が子に毎日やるとなると、お互い気が滅入ってきます。根気強くトレーニングして歯磨きが好きになるようにするのも大事ですが、できる範囲のデンタルケアをコツコツと続けるというのもありだと思います。デンタルガムやデンタルサプリメント、デンタルグッズ、何でもいいと思います。我が子が受け入れてくれるものがきっとあると思います。 そして、定期的に口腔内をチェックし、ある程度歯石がついてしまったら、麻酔下でのスケーリング(歯石取り)をするという流れはいかがでしょうか。欧米では生涯に1~2回の麻酔下スケーリングは一般的になってきています。 ●ここで注意点 歯磨き効果があると思って鹿の角やヒマラヤチーズなど、カッチカチのものを与えている飼い主さんがいたら、これは絶対にやめてもらいたいと思います。かなりの確率で歯が折れる、破折という状態(奥歯が縦に板状に折れる平板破折が多い、特にワンちゃん)が起こります。ある日急に口臭が気になるようになったら破折の可能性がありますのでご注意ください。 次に、無麻酔スケーリングをしているという話をしばしば聞きます。これもやめたほうがいいと思います。麻酔のリスクが心配という気持ちも分かりますが、動かないようにがっちり保定され、意識がある状態でゴリゴリと先の尖ったスケーラーで削られるわけです。かなりの確率でそのトラウマにより、家でのデンタルケアが不可能になります。また、無麻酔スケーリングでの事故の報告も多くあります。そんなリスクがありながら一番大事な歯周ポケットの歯石は取れていないので、終わった後も口臭がするという話もよく聞きます。 ●ワンちゃんネコちゃんも歯が命 歯周病は心臓や腎臓疾患を悪化させるリスクがあります。我が子が受け入れてくれるデンタルケアを一つでも見つけていただき、それを継続してもらいたいと思います。また、定期的な歯のチェックや健康相談は往診でも対応可能です。気になったらまずはご相談下さい。 健康な歯で長生きしましょう!
執筆者:るぼんず 院長 野村 弓圭里 時折横切るキツネや鹿に気をつけながら牧場に入ると、馬の獣医師の先生の往診者とすれ違います。入れ替わりで私が診察するのは馬ではなく、そこにいる猫たち。 ここ北海道の日高町は馬産地で、牛馬問わずたくさんの牧場があります。そしてそこでたくさんの猫が暮らしています。猫たちは牧場で働く方々の癒しの存在でありながら、ネズミを追い払う仕事をしたり、SNSでバズってアイドルのようになったりと大忙しです。今回はそのような日高の牧場で暮らす猫たちにスポットを当ててみたいと思います。 ●外暮らしの猫たちの困りごと 普段は屋外にいる猫たちにとって、寄生虫感染はよくある困りごとの一つです。猫同士でうつるシラミ、野生動物が運んでくるダニ、シラミやネズミが原因の条虫など…予防できるものではありますが、予算や耐性の心配から状況に応じて薬を処方します。その子の状態にもよりますが、年に1、2回薬を使うだけでもうまく健康を維持できているようです。 猫エイズ(FIV)にも悩まされました。比較的若い年齢で免疫不全になり、亡くなってしまう子が続きました。少しずつ不妊手術が浸透しオス同士の血を見る争いが減ったのか、検査でFIV陽性が出ることが減りましたが、FIVキャリアの子も、免疫力の低下を早めにキャッチして対処してあげることが重要と考えます。 ●厳しい冬を乗り切る工夫 冬にはもちろん厳しい寒さが待っています。日高町の門別地区は太平洋側で、そこまで雪深くはないのですが、それでも飲み水は凍るし小さな体は体温が奪われてしまいます。そこで休憩室で暖を取れるようにしたり、飲み水が凍らないようにする工夫がされています。この飲み水が凍らない工夫は病気の予防としてもとても重要で、現地で診察することで私のほうが勉強になることもあります。こうして寒さ対策を取ることで数々の冬を乗り越え、18歳現役でネズミ取りができるような猫たちも存在しています。ちなみに凍傷やしもやけになってしまった猫に出会ったことはまだありません。 たとえ敷地が広かったとしても、交通事故に遭ってしまう子が一定数いるのも現実です。やはり伴侶動物である猫は室内で生活が基本ということは念頭に置きつつ、みんながみんな完全室内でというわけにいかない中でも、できるだけ彼らの健康を維持できるよう、これからも往診で手助けしていきたいと考えています。馬や牛と同様に牧場の猫にも往診という手段があることを、生産者の方々にも喜んでいただいているようです。
執筆者:往診専門犬猫クリニックあしおと 院長 下瀬 昭広 「ノミ・ダニ予防だけなのですが…」どこか申し訳なさそうに往診のご依頼をされる飼い主様がいらっしゃいます。 確かに、往診では寝たきりの子、移動手段がない子たちを診察する機会が多いのですが、健康な子の病気の予防にも力を入れているので、お気軽にご予約ください。何かと忙しい春先は、フィラリア予防や狂犬病予防などで動物病院も混み合います。「忙しくて時間が取れない。」「元気は良いから、つい後回しになってしまう。」「多頭飼いだから大変。」そんな方も、往診ならご希望の時間にお家でリラックスして予防を行えます。もちろん、狂犬病予防注射やフィラリア病予防、混合ワクチン接種などと同時にご依頼いただけます。 暖かい春の季節は、お散歩でノミ・マダニが寄生するリスクが増えます。 ノミは気温や室温が13℃以上で繁殖をはじめ、20~30℃でさらに大量に繁殖します。ノミアレルギー性皮膚炎を起こすだけでなく、瓜実条虫という寄生虫の感染経路にもなります。また、子犬や子猫やシニア犬に大量に寄生し吸血することで貧血の原因にもなります。 マダニも春から秋にかけて活発になり、犬バベシア症や猫ヘモプラズマ症など犬や猫に関わる病気の感染源になります。 さらに、人間に対しても、近年、国内で複数の死亡例が確認されたSFTS(重症熱性血小板減少症候群)など恐ろしい伝染病を運んできます。 身の回りにあって実は怖いノミ・マダニの予防は、健康で幸せな生活に欠かせません。春の大事な予防をもっと身近に、往診でそんなお手伝いができれば幸いです。
執筆者:イース往診どうぶつ診療所 院長 木口 久幸 休み明けのある日、連日明け方3~4時まで働いた疲労の名残を腹にためながら、入院処置室の扉を開けると、点滴されている白猫が嘔吐しているのに出会わしました。それは獣医にとってはよくある場面なのですが、黄色っぽい吐物の中に見覚えのある物があります。 アセビ(馬酔木)の花です。知らない人には花に見えないような花ですが、「馬酔木」の字の通り、馬をも倒すほどの猛毒です。2~4月に白や薄いピンクの花を咲かせ、スズランに似ていて、公園や街路樹として見かけます。 その猫が吐いたのは花がら1つでしたが、それだけでも1頭の猫を瀕死の状態に追い込むのに充分だったのかもしれません。飼い主様にお聞きしたところ、かわいい鉢植えだからと誕生日に友人から贈られたそうです。幸い、その猫は回復し事なきを得ましたが、もし亡くなっていたら、そのご友人もどうしてよいか分からないぐらい不幸なことになっていたかもしれません。 私は少し歳をとってから大学に入り直し、獣医になりましたが、その前は小さな花屋をやっていました。場所も時代も違いますが、花屋さんで自分の扱っている花が、動物たちにどんな害を与えるか、知識を持っている方は皆無に近いでしょう。 獣医でも動物に毒性を持つ花の全てを知っている人は少ないかもしれません。今はスマホ1つで、大概のことは調べられます。(埼玉県上尾市の井上動物病院のHPにある「ペットに危険な植物」はお勧めですよ) これからの季節、クリスマスシーズンになれば街も華やかになり、ポインセチア、シクラメンなど窓辺に飾ると素敵ですね。でも、その花大丈夫?お気を付けください。
執筆者:まりこ動物往診所 院長 竹野 まりこ 膀胱炎には細菌性や特発性のものがあります。膀胱炎は、全年齢で起こりうる病気です。症状としては、頻尿、血尿、排尿困難、排尿痛、トイレ以外での排泄、二次的におこる尿道閉塞などが見られます。細菌性膀胱炎は、通常無菌的な膀胱内へ細菌が逆行感染することでおこります。尿道が長いオスよりもメスがなりやすい傾向にあり、犬では尿路感染症が主に関係し、猫では糖尿病や副腎皮質機能亢進症、慢性腎臓病、Felv/FIVなど基礎疾患がある場合もあるため、膀胱炎を疑う際には、検診など定期的に受診し他の病気がないかも見てあげましょう。 また特発性膀胱炎は、一般的に猫にはもっとも多いといわれており、その原因は動物を取り巻く環境的な要素が大きく、ストレスの強い生活をすることで発症します。特に飲水量が少なくなるようなドライフードのみの食生活や、飲水量が減少する季節の変わり目、トイレが清潔でない(気に入らない)、排尿を我慢させてしまう環境、肥満や神経質な性格なども要因としてあげられます。最近では飼育環境によるストレスや、食生活が原因のヤギの膀胱炎や尿石症(ひどい場合、尿閉になることも)も往診時によく見かけます。 これから寒くなる季節ですので、十分な飲水量の確保や、ストレスの少ない環境づくりなど、今一度振り返ってみてあげてください。往診では、ご自宅の飼育環境やいつもの動物たちを直に飼い主様と同じ目線で獣医師が共有できるので、一緒に考え問題解決に取組めます。お気軽にご相談ください。 また、年1~2回の定期的な健康診断(尿検査も含めて)は、症状が出る前の健康な個々の身体の状態(基準)を知ることでその子の病気の早期発見にも役立ちます。ぜひ、定期的な検診受診をお勧めします。
執筆者:メープルファミリー動物病院 院長 朝井 鈴佳 皮膚病に悩まされている犬猫が多い昨今、「皮膚病も往診頼めますか?」とお問合わせをいただくことがあります。緊急でも重病でもないのに往診頼んでいいのかな?と言うことなのですが、答えは「イエス!」です。 これまでに往診で出会った皮膚病の犬猫の中には、車に乗るだけで下痢や嘔吐する子、動物病院だと震えが止まらない子、車に乗せるのも大変な超大型犬や高齢の子たちがいます。またお子さんが小さくて動物病院に行く時間がない飼い主様や、運転免許証を返納されて動物病院に行く手段がない飼い主様など、往診ご依頼の理由は様々です。でも、そのような明確な理由がなくても皮膚病の往診はしています。 皮膚患部の診察をしながら、ご自宅でたくさんのお話をしていると、環境や食べ物などの見直しのヒントも出てきます。その結果、皮膚症状の良化だけでなく体質改善にもつながり、徐々に犬猫が元気になってくることもよくあります。また先日ご依頼があったのは、急に皮膚が真っ赤になった子の往診です。実はホットカーペットによる低温やけどだったのですが、その場で原因がわかり早急な対応ができたので、大事には至りませんでした。(低温やけどは命に関わるケースもありますので、皆様くれぐれもお気を付けください。) ご依頼を受けても日程や場所、犬猫の性格などを総合的に考慮した結果、心苦しくもお断りする場合もあります。でも往診のハードルはそんなに高くありません。「往診してもらえるかな?」と迷ったら、まずは気軽に問い合わせていただくことがとても大切だと思います。
執筆者:往診専門 森のくま動物病院 院長 大熊 慶子 「呼吸が苦しい」犬猫は、往診にはとても多い症例です。息が苦しい動物がカゴに入れられ、乗り物に乗って、待合で待って、知らない診察室で知らない人に囲まれるのは大変なこと。 ある高齢のチワワは、僧帽弁閉鎖不全症で肺水腫になり、行きつけの病院で「もうできることはない」と言われたそうです。最大量の心臓のお薬をもらっていました。肺水腫の治療は水を落とすこと。ここから先は、多量の利尿剤を注射して肺の水がなくなるようにするという治療になりますが、心臓はラクになっても脱水が腎臓に負担をかけるので、血液検査と入院治療が必要になります。 入院中に死亡することもあるので、 もう治療をしないでおうちに帰る判断も妥当でした。 一か八か、おうちの酸素室で飼い主さんに利尿剤を飲ませてもらい、 呼吸の苦しさの指標である、寝ている時の呼吸数をLINEで知らせてもらいお薬を増減しました。すると夜も眠れない苦しさだったのが、肺水腫から離脱することができたのです。腎臓の数値も問題ありませんでした。 これはとてもうれしいことでした。ご自宅にも酸素室は設置でき、 往診にもエコーと血液検査機器はあり、そして何より飼い主さんが大変優秀な動物看護士さんであった ことから、リモートで動物病院に入院しているような治療ができるのです。 心臓病、腫瘍、甲状腺の病気などで、胸水のたまる猫の治療も多く行っています。内科疾患の末期は良くなることばかりではありませんが、おうちで飼い主さんと二人三脚で、動物のために一番よいと思われる次の一手を打っていく、往診治療に大変やりがいを感じています。
今回は、外傷性後肢麻痺のわんちゃんの車いす製作をお手伝いしましたのでご紹介します! この子は事故により両方の後脚が麻痺してしまい、自力で歩けなくなってしまいました。 飼い主さんは、車いすについて教えてほしい、リハビリをお願いしたい、ということで往診での診察を依頼されました。 最初にご自宅に訪問したときは事故から1ヶ月が経とうとしているところでした。 医療センターでの集中治療を受け、幸い一命は取り留めたものの、食欲や元気がなく、、。 お散歩が大好きだったというこの子は、突然自分の体が思うように動かせなくなってしまい戸惑っている様子。とても不安げな顔をしていたのが印象的な子でした。 この子にもう一度歩けるようになってほしい、とにかく元気になってほしいというのが飼い主さんのお願いでした。 車椅子を製作している工房さんをご紹介し、後日、みんなで一緒に採寸をしました。 初めは進み方がわからず戸惑っている様子でしたが、1週間もすれば自分で行きたい方向に進めるようになりました!とのこと。 少しずつ外へ出るようになり、表情も明るくなった気がしますね。 すっかり食欲も戻り、今はリハビリや漢方治療などを頑張ってくれています!
往診獣医師協会の獣医師が、Sippo Festa 2023 に参加します! https://sippofesta.com/ ----- 開催日時:2023年6月24日(土)10:00-17:30、25日(日)10:00-17:00 会場:国営昭和記念公園みどりの文化ゾーンゆめひろば ----- 往診獣医師協会の獣医師によるわんちゃん健康相談会を行います。 開催場所:わんちゃん健康相談会ブース時間:終日相談料:無料予約不要(混雑している場合はお待ちいただく場合がございます) ----- わんちゃんのことで疑問やお悩みのある方、お気軽にお越しください✨ 往診ってどんな感じなのだろう…と興味はあるけどなかなか踏み出せない方も、 実際に往診の先生に会って、気になることを聞いたり雰囲気を感じてくださいね🍀 みなさんにお会いできるのを楽しみにしています!!
痒みの原因は、犬小屋にあり!? 都心部ではマンションなどの集合住宅でも飼いやすい小型犬や猫が人気ですが、郊外では敷地を広く活用できるため、のびのび外飼いのわんちゃんも多いです。 先日、こんな相談がありました。 2週間程前から急激に皮膚炎が進行し、全身掻き壊してひどい状態。外飼いの犬なので野生のタヌキから何かうつったかもしれない。 とのこと。 タヌキ、皮膚炎、でまず最初にピンと来るのは疥癬症(かいせんしょう)です。 疥癬症とは、ヒゼンダニというダニの感染が原因で起こる皮膚炎です。 往診に伺い玄関先に車を停めると、さっそく庭先で吠えてお出迎え。 番犬としてしっかりお仕事してますねー。 そのわんちゃんは、遠目でもわかるほど脱毛が進行し、特に大腿部と四肢でひどい様子でした。時々後ろ足で体を掻きむしっています。 うーん、これはかなり痒そうだ。 痒みを伴う皮膚炎を起こす病気はいくつかあるのですが、タヌキが犬小屋に入り込んでいたのを見たという稟告と症状の経過から、今回は疥癬症を疑って駆虫薬を処方しました。 結果、皮膚炎は2週間ほどで良くなり、1ヶ月後には毛も生えて見違えるほどになりました! しかし原因となるダニとの接触を避けなければ再感染し症状を繰り返す可能性があります。 わんちゃんが普段過ごしている小屋には囲いがありませんでしたので、野生動物の侵入を防止するため柵や網を張っていただくようアドバイスいたしました。 次回お伺いすると、DIYされていました! これでタヌキさんが入り込むことはないでしょう。 また、外飼いでは虫に刺されやすかったり、ネズミなどの小動物が侵入する可能性もありますので、フィラリア症の予防、ノミやダニの予防、ワクチン接種なども継続して行っていただくといいですね。 往診での診察は、ご家庭でのペットの飼育環境を見てお話しできるところも魅力のひとつです。 今回のような外飼いのわんちゃんだけでなく、トイレのしつけについての相談ができたり、介護をしている子や多頭飼いの子たちの住環境についてもご相談いただけます。 特に猫ちゃんの場合は尿路系疾患が多く、トイレの大きさや設置場所、水のみ場の状況も重要なポイントになります。トイレの設置数を増やしたら、なかなか治らなかった膀胱炎がおさまった、なんてことも。 このように往診獣医師は病気の治療だけでなく、生活環境を見直し、健康維持にお役に立てるようなアドバイスも行っております。 うちの子のおうちも見てもらいたい!と思った際は、お気軽に往診専門動物病院へご相談ください。
こんにちは! 今日はおうち看護の工夫、第2弾です。 おうちとペットの数だけ、できること・できないことがあり、看護の工夫は様々です。 他の皆様のお役に立つかも、と思い、その工夫を共有させていただきます。 今日のご紹介は、歳を取って踏ん張りがきかず、ご自宅のフローリングで滑ってしまう柴犬さんです。 あまり気にしない子だと、滑り止め付きのわんちゃん用の靴や靴下を履いてくれる子もいます。でも気にして外してしまう子が多いですよね… 床材を替えられるなら最高ですが、そうもいかないことも多いと思います。 今回の柴犬さん。 市販の肉球に貼る滑り止めを使って、足が流れず歩けるようになりました! 市販のものは、肉球すべてを覆うものですが、これだとかなり気にしてしまうとのこと。 飼い主様がご自身でカットして(写真の〇の部分)、一番大きな肉球にのみ貼っています。 こんな小さく思えるひと工夫で、本人も気にせず、そして滑らすにフローリングを歩けるようになりました。 困った際のヒントになれば嬉しいです!
大型犬のトイレ問題 寝たきりになったらどうしよう!? それは、14歳のスタンダードプードルの飼い主さんからのお電話でした。 なんと3日間おしっこが出ていない、とのこと。 えええ、、3日間もおしっこ出ないの?ほんとうに?? 驚きながらも経過を詳しく聞くと、数日前から急な眼球振盪とふらつきで立つことができず、寝たきりになってしまったそうです。 体重が24kgあり、飼い主さん(女性)が抱えて車に乗せられず、通院が困難に。 近所のかかりつけ動物病院でお話だけしたら、おそらく特発性前庭疾患だろうということ。 激しい嘔吐でごはんもお水も摂取できていないため、点滴剤と注射セットをもらって、発症からの3日間は自宅で皮下補液をしている。ということでした。 ところが3日目になっても、おしっこが出ない! かかりつけでは往診をやっておらず、インターネットで往診動物病院を探して、こちらへ電話をしたのだそうです。 膀胱におしっこが溜まっているかどうか、診てほしい。 おしっこが溜まっているなら圧迫やカテーテルで出してほしい、とのご依頼でした。 緊急性が高いと判断し、お電話の後すぐに往診へ。 診察をしてみると、膀胱はパンパンになって硬く張っていました! これは、かなりつらそうだ、、、。 この子は普段の排尿はお外でしているとのこと。 どうやら自力で立ち上がれないこともあって、トイレを我慢してしまっていたようです。 これ、けっこう大型犬あるあるなんです。 普段、お散歩中に外で排泄している子は、外に出るまでずっとおしっこを我慢してしまうんですよね。 けれども具合が悪くて立てない大型犬を、外に連れて行くのは至難の業です。 もし入院中であれば、尿道カテーテルを設置してしまうところです。 このスタンダードプードルさんも、カテーテルを通して尿を抜いてあげることにしました。 (硬くパンパンに張った膀胱に対して圧迫排尿をすると、膀胱に過度な圧力がかかり破裂してしまうことがありますので注意が必要です。) カテーテルを入れるとすぐに尿が出てきました。 何度もシリンジで引いて、どんどん抜いていきます。 抜いても抜いてもなかなか空になりません。 ペットシーツがどんどん重たくなっていき、、、 なんと、700cc近く、抜けました!! 1日に250cc点滴をしていたので、摂取した水分くらいは尿が溜まっていたようです。 抜去後は、下腹部がすっきりペタンコになっていて こんなに溜まってたんだね!と飼い主さんも驚いていました。 今回、おしっこが出ない原因は単に我慢していただけ、ということになりますが、我慢しすぎると腎臓に負担がかかってしまいます。 また、尿道結石が詰まって尿が出ない場合(尿道閉塞)、早急におしっこが出るように詰まりを解除してあげなければ命に関わります。 そのほか、尿が作られていなくて出ていない、ということであれば急性腎不全の可能性もありこちらもすぐに治療が必要です。 このスタンダードプードルちゃんは、その後も自然に出せるようになるまで毎日カテーテルで尿を抜くことになりましたが、現在は前庭疾患の症状もおさまり問題なく排尿できています。 後日の血液検査で腎臓に異常がないことも確認できましたので、ほっとひと安心でした。 1日以上おしっこが出ていない、という場合は、すぐに治療を受けるようにしましょう。 通院が難しい場合は、迷わず往診専門動物病院へご相談ください!