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飼い主様向けコラム

Cerca『東洋医学とセルフメディケーション』

執筆者:動物往診+在宅ケアサービス にくきゅう 院長 立石 絵美

 「東洋医学」と聞くとなんだか難しい言葉に聞こえますが、「鍼・お灸・漢方薬」と分けて考えるとわかりやすいでしょうか。

 西洋医学では一つの症状に対して1つの薬剤を使用することが多く行われます。(もちろん例外もあります)

 これに対し、東洋医学では表面に表れている症状と、原因になっている体質と両方を見極め、どちらの治療も同時にケアしていく、という考え方に基づいて治療を行います。

 心臓が悪くなると心臓の薬、肝臓が悪くなると肝臓の薬、というように、年齢を重ねると次々に薬の処方が増えていきますが、そのような状態になってしまった根本的な原因は、実は同じ体質の変化から来ていることも少なくありません。

 例えば「下痢」という症状ひとつを見ても、若くて健康体の子の急性の下痢と、食が細く痩せ気味で震えている子の慢性の下痢では、同じ「下痢止め薬」で治療する、という考え方で本当に良くなるのでしょうか?

 東洋医学ではこれを「同病異治」と言います。つまり、症状が同じでも、それが起こった原因は異なるため、違う処方が必要になるのです。

 仮に同じ薬を使う場合でも、その子の体質や状態によって処方の量を変えることもあります。

 クローン技術で作成された動物でないかぎり、1頭1頭は違う個体であり、体質も性格も薬に対する反応も異なります。ですので、その子の状態だけで無く体質や性格、場合によっては毛色や誕生日、家庭環境などを総合的に判断して診断と治療を行う、これが東洋医学の特徴です。このような理由から、東洋医学は「オーダーメイドの治療」と言われます。

 また、身体は食べたもので作られます。当然のことですが、これを意識して毎日の食事を用意している飼い主さんはごく少数です。毎日同じペットフードを与え、時々オヤツや人の食べ物を与える、という方がほとんどだと思います。

 「獣医さんでこのフードを与えるように言われたので」と処方食を長期間続けている子も多く見かけます。薬の処方と同じように、1頭1頭体質が違うのに、同じ病気だから同じフードを何年も与え続ける、これが本当に健康に良いと思いますか?

 実は漢方薬の材料になっている生薬と普段私たちが食べている食材には似たような効能を持つものが多くあります。

 生まれ持った体質の他に、身体を作るのは食べ物です。旬の食材はその季節に合った特徴や栄養素を持っています。いつものフードに季節や体質に合った食材をプラスすることで身体を整える手助けができます。完全な手作り食はハードルが高いですが、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

 食事の相談は動物病院では時間がかかるために倦厭されがちです。実際に与えている食事を確認しながら、他の患者さんに遠慮せずに相談ができるのが往診のメリットです。

 病気ではなくても往診を活用して、大切な家族の健康維持を考えるきっかけになれば嬉しいです。

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Cerca編集部

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