執筆者:まりこ動物往診所 院長 竹野 まりこ 膀胱炎には細菌性や特発性のものがあります。膀胱炎は、全年齢で起こりうる病気です。症状としては、頻尿、血尿、排尿困難、排尿痛、トイレ以外での排泄、二次的におこる尿道閉塞などが見られます。細菌性膀胱炎は、通常無菌的な膀胱内へ細菌が逆行感染することでおこります。尿道が長いオスよりもメスがなりやすい傾向にあり、犬では尿路感染症が主に関係し、猫では糖尿病や副腎皮質機能亢進症、慢性腎臓病、Felv/FIVなど基礎疾患がある場合もあるため、膀胱炎を疑う際には、検診など定期的に受診し他の病気がないかも見てあげましょう。 また特発性膀胱炎は、一般的に猫にはもっとも多いといわれており、その原因は動物を取り巻く環境的な要素が大きく、ストレスの強い生活をすることで発症します。特に飲水量が少なくなるようなドライフードのみの食生活や、飲水量が減少する季節の変わり目、トイレが清潔でない(気に入らない)、排尿を我慢させてしまう環境、肥満や神経質な性格なども要因としてあげられます。最近では飼育環境によるストレスや、食生活が原因のヤギの膀胱炎や尿石症(ひどい場合、尿閉になることも)も往診時によく見かけます。 これから寒くなる季節ですので、十分な飲水量の確保や、ストレスの少ない環境づくりなど、今一度振り返ってみてあげてください。往診では、ご自宅の飼育環境やいつもの動物たちを直に飼い主様と同じ目線で獣医師が共有できるので、一緒に考え問題解決に取組めます。お気軽にご相談ください。 また、年1~2回の定期的な健康診断(尿検査も含めて)は、症状が出る前の健康な個々の身体の状態(基準)を知ることでその子の病気の早期発見にも役立ちます。ぜひ、定期的な検診受診をお勧めします。
執筆者:メープルファミリー動物病院 院長 朝井 鈴佳 皮膚病に悩まされている犬猫が多い昨今、「皮膚病も往診頼めますか?」とお問合わせをいただくことがあります。緊急でも重病でもないのに往診頼んでいいのかな?と言うことなのですが、答えは「イエス!」です。 これまでに往診で出会った皮膚病の犬猫の中には、車に乗るだけで下痢や嘔吐する子、動物病院だと震えが止まらない子、車に乗せるのも大変な超大型犬や高齢の子たちがいます。またお子さんが小さくて動物病院に行く時間がない飼い主様や、運転免許証を返納されて動物病院に行く手段がない飼い主様など、往診ご依頼の理由は様々です。でも、そのような明確な理由がなくても皮膚病の往診はしています。 皮膚患部の診察をしながら、ご自宅でたくさんのお話をしていると、環境や食べ物などの見直しのヒントも出てきます。その結果、皮膚症状の良化だけでなく体質改善にもつながり、徐々に犬猫が元気になってくることもよくあります。また先日ご依頼があったのは、急に皮膚が真っ赤になった子の往診です。実はホットカーペットによる低温やけどだったのですが、その場で原因がわかり早急な対応ができたので、大事には至りませんでした。(低温やけどは命に関わるケースもありますので、皆様くれぐれもお気を付けください。) ご依頼を受けても日程や場所、犬猫の性格などを総合的に考慮した結果、心苦しくもお断りする場合もあります。でも往診のハードルはそんなに高くありません。「往診してもらえるかな?」と迷ったら、まずは気軽に問い合わせていただくことがとても大切だと思います。
執筆者:往診専門 森のくま動物病院 院長 大熊 慶子 「呼吸が苦しい」犬猫は、往診にはとても多い症例です。息が苦しい動物がカゴに入れられ、乗り物に乗って、待合で待って、知らない診察室で知らない人に囲まれるのは大変なこと。 ある高齢のチワワは、僧帽弁閉鎖不全症で肺水腫になり、行きつけの病院で「もうできることはない」と言われたそうです。最大量の心臓のお薬をもらっていました。肺水腫の治療は水を落とすこと。ここから先は、多量の利尿剤を注射して肺の水がなくなるようにするという治療になりますが、心臓はラクになっても脱水が腎臓に負担をかけるので、血液検査と入院治療が必要になります。 入院中に死亡することもあるので、 もう治療をしないでおうちに帰る判断も妥当でした。 一か八か、おうちの酸素室で飼い主さんに利尿剤を飲ませてもらい、 呼吸の苦しさの指標である、寝ている時の呼吸数をLINEで知らせてもらいお薬を増減しました。すると夜も眠れない苦しさだったのが、肺水腫から離脱することができたのです。腎臓の数値も問題ありませんでした。 これはとてもうれしいことでした。ご自宅にも酸素室は設置でき、 往診にもエコーと血液検査機器はあり、そして何より飼い主さんが大変優秀な動物看護士さんであった ことから、リモートで動物病院に入院しているような治療ができるのです。 心臓病、腫瘍、甲状腺の病気などで、胸水のたまる猫の治療も多く行っています。内科疾患の末期は良くなることばかりではありませんが、おうちで飼い主さんと二人三脚で、動物のために一番よいと思われる次の一手を打っていく、往診治療に大変やりがいを感じています。
今回は、外傷性後肢麻痺のわんちゃんの車いす製作をお手伝いしましたのでご紹介します! この子は事故により両方の後脚が麻痺してしまい、自力で歩けなくなってしまいました。 飼い主さんは、車いすについて教えてほしい、リハビリをお願いしたい、ということで往診での診察を依頼されました。 最初にご自宅に訪問したときは事故から1ヶ月が経とうとしているところでした。 医療センターでの集中治療を受け、幸い一命は取り留めたものの、食欲や元気がなく、、。 お散歩が大好きだったというこの子は、突然自分の体が思うように動かせなくなってしまい戸惑っている様子。とても不安げな顔をしていたのが印象的な子でした。 この子にもう一度歩けるようになってほしい、とにかく元気になってほしいというのが飼い主さんのお願いでした。 車椅子を製作している工房さんをご紹介し、後日、みんなで一緒に採寸をしました。 初めは進み方がわからず戸惑っている様子でしたが、1週間もすれば自分で行きたい方向に進めるようになりました!とのこと。 少しずつ外へ出るようになり、表情も明るくなった気がしますね。 すっかり食欲も戻り、今はリハビリや漢方治療などを頑張ってくれています!
往診獣医師協会の獣医師が、Sippo Festa 2023 に参加します! https://sippofesta.com/ ----- 開催日時:2023年6月24日(土)10:00-17:30、25日(日)10:00-17:00 会場:国営昭和記念公園みどりの文化ゾーンゆめひろば ----- 往診獣医師協会の獣医師によるわんちゃん健康相談会を行います。 開催場所:わんちゃん健康相談会ブース時間:終日相談料:無料予約不要(混雑している場合はお待ちいただく場合がございます) ----- わんちゃんのことで疑問やお悩みのある方、お気軽にお越しください✨ 往診ってどんな感じなのだろう…と興味はあるけどなかなか踏み出せない方も、 実際に往診の先生に会って、気になることを聞いたり雰囲気を感じてくださいね🍀 みなさんにお会いできるのを楽しみにしています!!
痒みの原因は、犬小屋にあり!? 都心部ではマンションなどの集合住宅でも飼いやすい小型犬や猫が人気ですが、郊外では敷地を広く活用できるため、のびのび外飼いのわんちゃんも多いです。 先日、こんな相談がありました。 2週間程前から急激に皮膚炎が進行し、全身掻き壊してひどい状態。外飼いの犬なので野生のタヌキから何かうつったかもしれない。 とのこと。 タヌキ、皮膚炎、でまず最初にピンと来るのは疥癬症(かいせんしょう)です。 疥癬症とは、ヒゼンダニというダニの感染が原因で起こる皮膚炎です。 往診に伺い玄関先に車を停めると、さっそく庭先で吠えてお出迎え。 番犬としてしっかりお仕事してますねー。 そのわんちゃんは、遠目でもわかるほど脱毛が進行し、特に大腿部と四肢でひどい様子でした。時々後ろ足で体を掻きむしっています。 うーん、これはかなり痒そうだ。 痒みを伴う皮膚炎を起こす病気はいくつかあるのですが、タヌキが犬小屋に入り込んでいたのを見たという稟告と症状の経過から、今回は疥癬症を疑って駆虫薬を処方しました。 結果、皮膚炎は2週間ほどで良くなり、1ヶ月後には毛も生えて見違えるほどになりました! しかし原因となるダニとの接触を避けなければ再感染し症状を繰り返す可能性があります。 わんちゃんが普段過ごしている小屋には囲いがありませんでしたので、野生動物の侵入を防止するため柵や網を張っていただくようアドバイスいたしました。 次回お伺いすると、DIYされていました! これでタヌキさんが入り込むことはないでしょう。 また、外飼いでは虫に刺されやすかったり、ネズミなどの小動物が侵入する可能性もありますので、フィラリア症の予防、ノミやダニの予防、ワクチン接種なども継続して行っていただくといいですね。 往診での診察は、ご家庭でのペットの飼育環境を見てお話しできるところも魅力のひとつです。 今回のような外飼いのわんちゃんだけでなく、トイレのしつけについての相談ができたり、介護をしている子や多頭飼いの子たちの住環境についてもご相談いただけます。 特に猫ちゃんの場合は尿路系疾患が多く、トイレの大きさや設置場所、水のみ場の状況も重要なポイントになります。トイレの設置数を増やしたら、なかなか治らなかった膀胱炎がおさまった、なんてことも。 このように往診獣医師は病気の治療だけでなく、生活環境を見直し、健康維持にお役に立てるようなアドバイスも行っております。 うちの子のおうちも見てもらいたい!と思った際は、お気軽に往診専門動物病院へご相談ください。
こんにちは! 今日はおうち看護の工夫、第2弾です。 おうちとペットの数だけ、できること・できないことがあり、看護の工夫は様々です。 他の皆様のお役に立つかも、と思い、その工夫を共有させていただきます。 今日のご紹介は、歳を取って踏ん張りがきかず、ご自宅のフローリングで滑ってしまう柴犬さんです。 あまり気にしない子だと、滑り止め付きのわんちゃん用の靴や靴下を履いてくれる子もいます。でも気にして外してしまう子が多いですよね… 床材を替えられるなら最高ですが、そうもいかないことも多いと思います。 今回の柴犬さん。 市販の肉球に貼る滑り止めを使って、足が流れず歩けるようになりました! 市販のものは、肉球すべてを覆うものですが、これだとかなり気にしてしまうとのこと。 飼い主様がご自身でカットして(写真の〇の部分)、一番大きな肉球にのみ貼っています。 こんな小さく思えるひと工夫で、本人も気にせず、そして滑らすにフローリングを歩けるようになりました。 困った際のヒントになれば嬉しいです!
大型犬のトイレ問題 寝たきりになったらどうしよう!? それは、14歳のスタンダードプードルの飼い主さんからのお電話でした。 なんと3日間おしっこが出ていない、とのこと。 えええ、、3日間もおしっこ出ないの?ほんとうに?? 驚きながらも経過を詳しく聞くと、数日前から急な眼球振盪とふらつきで立つことができず、寝たきりになってしまったそうです。 体重が24kgあり、飼い主さん(女性)が抱えて車に乗せられず、通院が困難に。 近所のかかりつけ動物病院でお話だけしたら、おそらく特発性前庭疾患だろうということ。 激しい嘔吐でごはんもお水も摂取できていないため、点滴剤と注射セットをもらって、発症からの3日間は自宅で皮下補液をしている。ということでした。 ところが3日目になっても、おしっこが出ない! かかりつけでは往診をやっておらず、インターネットで往診動物病院を探して、こちらへ電話をしたのだそうです。 膀胱におしっこが溜まっているかどうか、診てほしい。 おしっこが溜まっているなら圧迫やカテーテルで出してほしい、とのご依頼でした。 緊急性が高いと判断し、お電話の後すぐに往診へ。 診察をしてみると、膀胱はパンパンになって硬く張っていました! これは、かなりつらそうだ、、、。 この子は普段の排尿はお外でしているとのこと。 どうやら自力で立ち上がれないこともあって、トイレを我慢してしまっていたようです。 これ、けっこう大型犬あるあるなんです。 普段、お散歩中に外で排泄している子は、外に出るまでずっとおしっこを我慢してしまうんですよね。 けれども具合が悪くて立てない大型犬を、外に連れて行くのは至難の業です。 もし入院中であれば、尿道カテーテルを設置してしまうところです。 このスタンダードプードルさんも、カテーテルを通して尿を抜いてあげることにしました。 (硬くパンパンに張った膀胱に対して圧迫排尿をすると、膀胱に過度な圧力がかかり破裂してしまうことがありますので注意が必要です。) カテーテルを入れるとすぐに尿が出てきました。 何度もシリンジで引いて、どんどん抜いていきます。 抜いても抜いてもなかなか空になりません。 ペットシーツがどんどん重たくなっていき、、、 なんと、700cc近く、抜けました!! 1日に250cc点滴をしていたので、摂取した水分くらいは尿が溜まっていたようです。 抜去後は、下腹部がすっきりペタンコになっていて こんなに溜まってたんだね!と飼い主さんも驚いていました。 今回、おしっこが出ない原因は単に我慢していただけ、ということになりますが、我慢しすぎると腎臓に負担がかかってしまいます。 また、尿道結石が詰まって尿が出ない場合(尿道閉塞)、早急におしっこが出るように詰まりを解除してあげなければ命に関わります。 そのほか、尿が作られていなくて出ていない、ということであれば急性腎不全の可能性もありこちらもすぐに治療が必要です。 このスタンダードプードルちゃんは、その後も自然に出せるようになるまで毎日カテーテルで尿を抜くことになりましたが、現在は前庭疾患の症状もおさまり問題なく排尿できています。 後日の血液検査で腎臓に異常がないことも確認できましたので、ほっとひと安心でした。 1日以上おしっこが出ていない、という場合は、すぐに治療を受けるようにしましょう。 通院が難しい場合は、迷わず往診専門動物病院へご相談ください!