執筆者:往診専門犬猫クリニックあしおと 院長 下瀬 昭広 「ノミ・ダニ予防だけなのですが…」どこか申し訳なさそうに往診のご依頼をされる飼い主様がいらっしゃいます。 確かに、往診では寝たきりの子、移動手段がない子たちを診察する機会が多いのですが、健康な子の病気の予防にも力を入れているので、お気軽にご予約ください。何かと忙しい春先は、フィラリア予防や狂犬病予防などで動物病院も混み合います。「忙しくて時間が取れない。」「元気は良いから、つい後回しになってしまう。」「多頭飼いだから大変。」そんな方も、往診ならご希望の時間にお家でリラックスして予防を行えます。もちろん、狂犬病予防注射やフィラリア病予防、混合ワクチン接種などと同時にご依頼いただけます。 暖かい春の季節は、お散歩でノミ・マダニが寄生するリスクが増えます。 ノミは気温や室温が13℃以上で繁殖をはじめ、20~30℃でさらに大量に繁殖します。ノミアレルギー性皮膚炎を起こすだけでなく、瓜実条虫という寄生虫の感染経路にもなります。また、子犬や子猫やシニア犬に大量に寄生し吸血することで貧血の原因にもなります。 マダニも春から秋にかけて活発になり、犬バベシア症や猫ヘモプラズマ症など犬や猫に関わる病気の感染源になります。 さらに、人間に対しても、近年、国内で複数の死亡例が確認されたSFTS(重症熱性血小板減少症候群)など恐ろしい伝染病を運んできます。 身の回りにあって実は怖いノミ・マダニの予防は、健康で幸せな生活に欠かせません。春の大事な予防をもっと身近に、往診でそんなお手伝いができれば幸いです。
執筆者:イース往診どうぶつ診療所 院長 木口 久幸 休み明けのある日、連日明け方3~4時まで働いた疲労の名残を腹にためながら、入院処置室の扉を開けると、点滴されている白猫が嘔吐しているのに出会わしました。それは獣医にとってはよくある場面なのですが、黄色っぽい吐物の中に見覚えのある物があります。 アセビ(馬酔木)の花です。知らない人には花に見えないような花ですが、「馬酔木」の字の通り、馬をも倒すほどの猛毒です。2~4月に白や薄いピンクの花を咲かせ、スズランに似ていて、公園や街路樹として見かけます。 その猫が吐いたのは花がら1つでしたが、それだけでも1頭の猫を瀕死の状態に追い込むのに充分だったのかもしれません。飼い主様にお聞きしたところ、かわいい鉢植えだからと誕生日に友人から贈られたそうです。幸い、その猫は回復し事なきを得ましたが、もし亡くなっていたら、そのご友人もどうしてよいか分からないぐらい不幸なことになっていたかもしれません。 私は少し歳をとってから大学に入り直し、獣医になりましたが、その前は小さな花屋をやっていました。場所も時代も違いますが、花屋さんで自分の扱っている花が、動物たちにどんな害を与えるか、知識を持っている方は皆無に近いでしょう。 獣医でも動物に毒性を持つ花の全てを知っている人は少ないかもしれません。今はスマホ1つで、大概のことは調べられます。(埼玉県上尾市の井上動物病院のHPにある「ペットに危険な植物」はお勧めですよ) これからの季節、クリスマスシーズンになれば街も華やかになり、ポインセチア、シクラメンなど窓辺に飾ると素敵ですね。でも、その花大丈夫?お気を付けください。
執筆者:まりこ動物往診所 院長 竹野 まりこ 膀胱炎には細菌性や特発性のものがあります。膀胱炎は、全年齢で起こりうる病気です。症状としては、頻尿、血尿、排尿困難、排尿痛、トイレ以外での排泄、二次的におこる尿道閉塞などが見られます。細菌性膀胱炎は、通常無菌的な膀胱内へ細菌が逆行感染することでおこります。尿道が長いオスよりもメスがなりやすい傾向にあり、犬では尿路感染症が主に関係し、猫では糖尿病や副腎皮質機能亢進症、慢性腎臓病、Felv/FIVなど基礎疾患がある場合もあるため、膀胱炎を疑う際には、検診など定期的に受診し他の病気がないかも見てあげましょう。 また特発性膀胱炎は、一般的に猫にはもっとも多いといわれており、その原因は動物を取り巻く環境的な要素が大きく、ストレスの強い生活をすることで発症します。特に飲水量が少なくなるようなドライフードのみの食生活や、飲水量が減少する季節の変わり目、トイレが清潔でない(気に入らない)、排尿を我慢させてしまう環境、肥満や神経質な性格なども要因としてあげられます。最近では飼育環境によるストレスや、食生活が原因のヤギの膀胱炎や尿石症(ひどい場合、尿閉になることも)も往診時によく見かけます。 これから寒くなる季節ですので、十分な飲水量の確保や、ストレスの少ない環境づくりなど、今一度振り返ってみてあげてください。往診では、ご自宅の飼育環境やいつもの動物たちを直に飼い主様と同じ目線で獣医師が共有できるので、一緒に考え問題解決に取組めます。お気軽にご相談ください。 また、年1~2回の定期的な健康診断(尿検査も含めて)は、症状が出る前の健康な個々の身体の状態(基準)を知ることでその子の病気の早期発見にも役立ちます。ぜひ、定期的な検診受診をお勧めします。
執筆者:メープルファミリー動物病院 院長 朝井 鈴佳 皮膚病に悩まされている犬猫が多い昨今、「皮膚病も往診頼めますか?」とお問合わせをいただくことがあります。緊急でも重病でもないのに往診頼んでいいのかな?と言うことなのですが、答えは「イエス!」です。 これまでに往診で出会った皮膚病の犬猫の中には、車に乗るだけで下痢や嘔吐する子、動物病院だと震えが止まらない子、車に乗せるのも大変な超大型犬や高齢の子たちがいます。またお子さんが小さくて動物病院に行く時間がない飼い主様や、運転免許証を返納されて動物病院に行く手段がない飼い主様など、往診ご依頼の理由は様々です。でも、そのような明確な理由がなくても皮膚病の往診はしています。 皮膚患部の診察をしながら、ご自宅でたくさんのお話をしていると、環境や食べ物などの見直しのヒントも出てきます。その結果、皮膚症状の良化だけでなく体質改善にもつながり、徐々に犬猫が元気になってくることもよくあります。また先日ご依頼があったのは、急に皮膚が真っ赤になった子の往診です。実はホットカーペットによる低温やけどだったのですが、その場で原因がわかり早急な対応ができたので、大事には至りませんでした。(低温やけどは命に関わるケースもありますので、皆様くれぐれもお気を付けください。) ご依頼を受けても日程や場所、犬猫の性格などを総合的に考慮した結果、心苦しくもお断りする場合もあります。でも往診のハードルはそんなに高くありません。「往診してもらえるかな?」と迷ったら、まずは気軽に問い合わせていただくことがとても大切だと思います。
執筆者:往診専門 森のくま動物病院 院長 大熊 慶子 「呼吸が苦しい」犬猫は、往診にはとても多い症例です。息が苦しい動物がカゴに入れられ、乗り物に乗って、待合で待って、知らない診察室で知らない人に囲まれるのは大変なこと。 ある高齢のチワワは、僧帽弁閉鎖不全症で肺水腫になり、行きつけの病院で「もうできることはない」と言われたそうです。最大量の心臓のお薬をもらっていました。肺水腫の治療は水を落とすこと。ここから先は、多量の利尿剤を注射して肺の水がなくなるようにするという治療になりますが、心臓はラクになっても脱水が腎臓に負担をかけるので、血液検査と入院治療が必要になります。 入院中に死亡することもあるので、 もう治療をしないでおうちに帰る判断も妥当でした。 一か八か、おうちの酸素室で飼い主さんに利尿剤を飲ませてもらい、 呼吸の苦しさの指標である、寝ている時の呼吸数をLINEで知らせてもらいお薬を増減しました。すると夜も眠れない苦しさだったのが、肺水腫から離脱することができたのです。腎臓の数値も問題ありませんでした。 これはとてもうれしいことでした。ご自宅にも酸素室は設置でき、 往診にもエコーと血液検査機器はあり、そして何より飼い主さんが大変優秀な動物看護士さんであった ことから、リモートで動物病院に入院しているような治療ができるのです。 心臓病、腫瘍、甲状腺の病気などで、胸水のたまる猫の治療も多く行っています。内科疾患の末期は良くなることばかりではありませんが、おうちで飼い主さんと二人三脚で、動物のために一番よいと思われる次の一手を打っていく、往診治療に大変やりがいを感じています。
今回は、外傷性後肢麻痺のわんちゃんの車いす製作をお手伝いしましたのでご紹介します! この子は事故により両方の後脚が麻痺してしまい、自力で歩けなくなってしまいました。 飼い主さんは、車いすについて教えてほしい、リハビリをお願いしたい、ということで往診での診察を依頼されました。 最初にご自宅に訪問したときは事故から1ヶ月が経とうとしているところでした。 医療センターでの集中治療を受け、幸い一命は取り留めたものの、食欲や元気がなく、、。 お散歩が大好きだったというこの子は、突然自分の体が思うように動かせなくなってしまい戸惑っている様子。とても不安げな顔をしていたのが印象的な子でした。 この子にもう一度歩けるようになってほしい、とにかく元気になってほしいというのが飼い主さんのお願いでした。 車椅子を製作している工房さんをご紹介し、後日、みんなで一緒に採寸をしました。 初めは進み方がわからず戸惑っている様子でしたが、1週間もすれば自分で行きたい方向に進めるようになりました!とのこと。 少しずつ外へ出るようになり、表情も明るくなった気がしますね。 すっかり食欲も戻り、今はリハビリや漢方治療などを頑張ってくれています!
往診獣医師協会の獣医師が、Sippo Festa 2023 に参加します! https://sippofesta.com/ ----- 開催日時:2023年6月24日(土)10:00-17:30、25日(日)10:00-17:00 会場:国営昭和記念公園みどりの文化ゾーンゆめひろば ----- 往診獣医師協会の獣医師によるわんちゃん健康相談会を行います。 開催場所:わんちゃん健康相談会ブース時間:終日相談料:無料予約不要(混雑している場合はお待ちいただく場合がございます) ----- わんちゃんのことで疑問やお悩みのある方、お気軽にお越しください✨ 往診ってどんな感じなのだろう…と興味はあるけどなかなか踏み出せない方も、 実際に往診の先生に会って、気になることを聞いたり雰囲気を感じてくださいね🍀 みなさんにお会いできるのを楽しみにしています!!
前回は採尿の方法についてご紹介しました。尿検査でどんなことがわかるのでしょうか。 尿は、血液を腎臓で濾過し、尿細管を通り、膀胱に貯蓄され、尿道を通って排泄されます。 尿検査は腎臓や膀胱などの泌尿器系だけでなく、さまざまな病気の早期発見に役立ちます。 今回は尿検査でどんなことを調べているのかご紹介します。 1、尿の色調と混濁、臭い 正常な尿は淡黄色〜黄色で透明です。極端に薄い、オレンジ〜赤褐色、濁っている、異臭がするなどは注意です。 2、尿試験紙 潜血、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、たんぱく質、ブドウ糖、PHについて試験紙の色調変化をもとに調べます。尿糖やケトン体が出ていると糖尿病の疑い、潜血やPHの上昇があれば膀胱炎などの可能性を考えます。 3、尿比重の測定 屈折計を用いて尿比重を測定し腎臓の尿濃縮能を確認します。腎機能が低下してくるとおしっこが薄くなってきますので慢性腎臓病の早期発見に役立ちます。 4、顕微鏡による尿沈渣の観察 尿を遠心分離して沈殿したものを顕微鏡で観察します。染色液で染色することもあります。尿結石や結晶、円柱、赤血球や白血球、細菌などの病原体や癌などの細胞が出ていないかを観察します。 尿を調べるだけで体のいろんな情報がわかるのですね。 尿検査は大きな機械が必要ないため、往診でも行うことができます。 しかも尿を提出するだけなのでワンちゃんや猫ちゃんにとって負担がかかりません。 健康診断の一環として尿検査を受けてみてはいかがでしょうか。
以前のブログに書かせていただいた、皮下点滴のセット同様、処方される皮下点滴の針も病院によっていろいろです。 ①ピンクの注射針18G(※数字が小さいほど太い)②緑の注射針21G③緑の翼状針21G わたし個人としては②を処方することが多いけれど、 ①は針が太いので処置時間が短くて済むというメリットもあります。あまり痛がらない子や大型犬で、処置時間を重視するなら①も良いなと思います! 猫などで痩せてきてしまって、注射針だと失敗が増える場合、③がおすすめです!扱いやすいと思います。(←腎不全の猫ちゃんの、80歳のオーナーさんもこれで継続がんばれています✨) もし今、皮下点滴に関する困りごとがあれば、処方してもらう針を替え
すっかり秋も深まり、朝晩の冷え込みも厳しくなってまいりました。 猫ちゃんは寒くなると水をあまり飲まなくなってしまいます。 飲水量が減ると尿路結石や膀胱炎などの泌尿器系疾患を引き起こしやすくなりますので注意が必要です。 トイレの回数が増えた、トイレに座っている時間が長い、血尿などといった症状がある場合には、早めに尿検査を受けるようにしましょう。 ここで問題になるのが「どうやって採尿するのか?」です。 尿検査には不純物が混じっていない液体状態の尿が必要です。 量は5mlほどもあれば検査が可能です。 わんちゃんの採尿は比較的簡単なのですが、猫ちゃんは少し工夫が必要です。 方法①トイレ砂の上に裏返したペットシーツを敷いておき、砂に吸収されないようにする しかしこの方法ではシーツを気にした猫ちゃんが砂をかき混ぜてしまいうまくいかないことも多いです。 方法②おたまで取る おしっこをしているときに、後ろからそっとおたまを差し入れておたまに直接尿を受けます。 採れた尿はスポイトで吸って密閉できる容器に入れます。 お弁当用に売られているプラスチック製の醤油差しが便利です。 方法③採尿用スポンジを使う ウロキャッチャーといって棒の先のスポンジ部分に尿を染み込ませて使います。 おたまと同様に排尿時にそっと後ろから尿を受けます。 染み込ませたらチャック袋などに入れて乾かないようにします。 方法④システムトイレを使う システムトイレは、チップの下がすのこ状になっていて、チップを通り抜けた尿は最下部のペットシーツに染み込むようになっています。 ペットシーツを敷かないでおけば、簡単に液体のままの尿が採取できます。 採取した尿は時間が経つと酸化したり菌が繁殖したりして検査結果に影響が出てしまいます。 診察の直前に採尿できるのが理想ですが、密閉容器で冷蔵保存しておけば半日程度は検査可能です。 往診でも尿検査は可能ですが、事前に採尿をしておくと診察がスムーズです。 いざ採尿という時に困らないよう、どの方法が猫ちゃんに合っているか試しておくといいでしょう。
慢性腎臓病をはじめ、その他様々な病気の治療のために、ご自宅で皮下点滴を頑張っていらっしゃる方も多いと思います。同じ皮下点滴でも、処方されるセットは動物病院によっていろいろです。 今日は皮下点滴のセットを3種類ご紹介します。もし今、皮下点滴に関する困りごとがあれば、処方してもらうセットを替えることで解決するかもしれません! ①一番よくみる、シンプルなセット ①一番よくみるシンプルなセットです メリット:操作がシンプル、コストが安い デメリット:時間がかかる(←加圧バックを使うと早くなる)、入れる量がアバウトになる、輸液を吊るす場所が必要 ② ①のセット+三方活栓とシリンジ ② ①のセット+三方活栓とシリンジ メリット:①より時間はかからず、入れる量が正確、コストが安い、場所を選ばない デメリット:慣れるまで操作が煩雑←点滴中に動く子だとひとりでは難しいかも… ③50㎖のシリンジと翼状針 ③50㎖のシリンジと翼状針 メリット:短時間で済む、入れる量が正確、場所を選ばない デメリット:コストがかかる 私は往診先ではいつも③で処置しています。みんな処置時間が長いと嫌になってしまうので。。 毎日のことですから、お互いにストレスの少ない方法がみつかりますように!
かかりつけ動物病院に通院しているけど、負担を減らすため往診でできることは往診でお願いしたい、という方は増えています。 持病を抱えている子や高齢の子、病院が苦手な子は、うまく病院を併用できるといいですよね。 複数の病院にかかるとき、気をつけなければいけない事があります。 まずひとつ目は、病状を正しく説明できるようにしておくこと。 ふたつ目は、服用しているお薬について正しく説明できるようにしておくこと。 初診時には、この2項目(既往歴と服薬歴)について獣医師から質問されることが多いです。 うちの子の病気やお薬について説明できますか? 知っておくべきポイントについて確認していきましょう。 既往歴について ①いつから? 何歳の頃から症状があるのか、いつから治療しているのか、時系列で説明できるようにメモを残しておきましょう。 ②何の検査をした? いつ何の検査を受けたかメモを残しておきましょう。胸のレントゲン検査をした、お腹の超音波検査をした、頭のMRIを撮った、など。 血液検査、と一言で言ってもたくさんの項目があります。一般生化学検査、猫エイズウイルスの血液検査、副腎ホルモンの血液検査、など。 検査結果は紙でもらい保管しておきましょう。 ③診断名は? 診断が出ている場合は病名を聞きましょう。 肝臓が悪いと言われた、心臓が悪いと言われた、だけではおおまかな病状しか獣医師に伝わりません。 かかりつけ医に『この子の病名はなんですか?』と聞いておきましょう。 診察室で改めて聞きにくい場合は、受付などで看護師さんにお願いし、先生に確認してきてもらってもいいですね。 服薬歴について ①薬の名前は? 薬品名とmg数を聞いておきましょう。 錠剤のシートや薬袋に書いてある場合もあります。 分割錠や粉薬、シロップ剤などは書かれていない場合が多いので、受け取る際に確認しましょう。 同じ成分の薬でも、病院によって取り扱っているメーカー(商品名)が違う場合があります。 心臓の白い錠剤を飲んでいる、オレンジ色の粉薬を飲んでいる、などでは他院の獣医師には伝わりません。 ②いつから服薬してる? 薬の種類が増えてくると、どのお薬をいつから飲み始めたかわからなくなることがあります。 日付け入りの薬袋や明細を残しておきましょう。 病気や薬のことは、往診を依頼するときに限らず夜間に救急病院を受診する際にも必要な情報です。 いざ受診するときに慌てることがないよう、日頃からうち
ヒトの世界では良く聞かれるようになってきた「緩和ケア」という言葉をご存じですか? 緩和ケアは治療を諦めること、がんの末期で受けるもの、と思っている方もまだまだ多いと思います。 がんになると、がん自体の症状以外にも、痛み・倦怠感などの身体の不調や、落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛を経験するといわれています。これらの身体的・精神的な苦痛を和らげるのが緩和ケアです。ヒト医療ではがんと診断された時から、並行して行われるようになってきています。また、がん以外の慢性病にも、この概念が定着しつつあります。 緩和ケアのメリットは下記↓↓ ・病気を知り、治療の選択を助けること(←ペットの場合、ご家族の選択) ・身体を楽にすることで日常を取り戻す、がん治療に取り組みやすくなる ・心の辛さを和らげることで前向きになる(←ペットの場合、ご家族が前向きになることで空気察知する能力の高いペット自身の不安が少なくなる) 動物も同じです。緩和ケアは諦めることではなくて、その子がその子らしく毎日を過ごすために必要なことです。 がんでも、その他の治らない病気でも、闘病中に身体は楽なほうが良いし、できる限り好きなことをして過ごしたいし、家族が辛い顔をしている時間が少ないほうが良い。大好きなおうちに居られる時間が長いほうが良い。 往診は、ご自宅に伺うので、ペットの生活環境について気付けることが多い・飼い主様が質問しやすい環境・通院ストレスがない、などのメリットがあります。闘病中のペットと暮らす皆様の、力になれるかもしれません。困りごとがあれば、ぜひご相談ください! ※写真は鼻腔内リンパ腫で闘病中の猫ちゃん。毎日大好きなマグロを食べ、お気に入りの洗面台で水を飲み、マイペースにおうちで過ごしています!!
人馴れしていない保護猫ちゃんの診察ってどうしてますか? 念願叶ってついに保護猫ちゃんをおうちに迎えることができ、この子を絶対幸せにするぞ!と心に誓って数ヶ月。 ようやく家に慣れてきてくれたころ、なんだか様子がいつもと違う?もしかして具合悪いのかな? まだ完全に心を許してくれた訳ではないのに、抱っこや触ることも難しいのに、どうやって動物病院へ行くか悩みますよね。 そんなときはやはり往診が便利ですね。 便利ですが、当然獣医師のことなんてもっと信用していない訳で(動物好きなのに嫌われる運命・・・泣) 簡単には診せてくれませんので、慎重に行わないといけません。 とにかく嫌がることはしない、ストレスを与えない!これが鉄則です。 依頼を受けたらまず、保護猫ちゃんの飼育歴や家での過ごし方を詳しく確認します。 保護された時の状況や時期は?どのくらい慣れてきたのか? 普段からケージに入っているのか?お部屋は猫ちゃん専用のお部屋なのか? 1番困るのは、ご自宅へお伺いしても、廊下や家具の間に隠れてしまって、姿さえ見えないこと。 なので、見えないところに隠れてしまう子は、獣医師が来る前に診察できそうな場所に移動してもらいます。 家全体の行き来を自由にしている場合は、入ってくれるケージがあればそこで待機。 ケージに入ってくれない場合は、できるだけ物がなく狭めのお部屋に移動してもらいます。 扉で仕切れる廊下スペースや洗面所を片付けて、そこで診察させてもらうこともあります。 もし移動させる事が難しいようならば、無理せず普段の様子をそのまま診させてもらいます。 診察の際は、飼い主さんのお話を伺いつつ、少し距離を取ってそっと様子を観察します。 いきなり触ろうとすることは絶対ありません。 様子を観察するだけでもわかることは色々あります。 体格や被毛の艶などから栄養状態はどうか。 呼吸のし方や歩き方におかしなところはないか。 皮膚炎がないか、目ヤニやヨダレなど汚れているところはないか。 こちらの動きに対する目や耳の反応はどうか。 シャーっと言って口を開けてくれたら、粘膜の色も見ます。 また、排泄物や汚れなども重要なヒントになるのでトイレもよく確認します。 最後に、猫ちゃんが落ち着いていれば、声をかけ、そっと撫で、聴診器を当てます。 これだけでは情報として十分ではないかもしれません。 検査や注射などできないことも多々あります。 しかしここで無理やり何かしようと追い回してしまうと余計に恐怖心を与えかねません。 触れなくても、猫ちゃんはちょっとずつヒントをくれています。 その僅かなヒントを見逃さないこと。 そして、飼い主さんの「気づき」を手がかりに対処法を考えていきます。 常日頃から観察をすることがとっても大事ですね。 このように基本的には無理のない範囲で診察を進めていきますが、患部から出血しているなどどうしてもその子に何かをしないといけない場合もあります。 その場合は、飼い主さんの了承を得て鎮静剤を使用することもあります。 通院が難しい保護猫ちゃんたちですが、そんな時はぜひ往診専門動物病院をご活用ください。 お写真は、先日お伺いした保護猫のリリちゃん。 保護する前はこちら。↓ 今と表情が違いますね。 いつか、なでなでさせてくれるようになるといいなぁ。
動物用往診車の疑問にお答えします! 動物用往診車って言っても、動物病院の設備と違って、注射くらいしかやってもらえないんじゃない!? と、思っている飼い主様もいらっしゃるかもしれません・・・。 いえいえ、そんなことないんです!! 今回は、往診車に対する疑念(?)を解決すべく、往診獣医師協会の先生方にご協力いただき往診車を見せてもらいました! 往診車の大きさは? まずはじめに車の大きさですが、軽ワゴンや小型普通車などに乗っている先生が多いようです。 やはり住宅街へお伺いする事が多く、小回りがきいてたくさん荷物が乗せられる車が使いやすいですね。 車内での診察や処置が出来るよう、ミニバンやキャンピングカーなどを病院仕様にカスタムして診療にあたっている先生もいらっしゃいました! 車は近隣のコインパーキングを利用しますが、ご自宅の敷地内に停めさせていただくこともあります。 往診車の中に何がある? では、車内はどうなっているのでしょうか?? 先生方に写真を撮ってきてもらいました! 往診先で様々な状況に対応出来るよう、たくさんの診療道具を車載しています。 車内に棚を造作するなどし、できるだけたくさんの道具が載せられるようにしてあります。 また、カテゴリーごとに箱やカゴにまとめてすぐに運び出せるよう工夫されています。 ですが、病院内にあるものを全て持っていくことはできません。 ご予約時に状況を伺い、必要なものを想定して車へ積み直しています。 診療範囲がさほど広くない先生は、1件ごとに診療拠点に戻ることもあるようです。 聴診器や注射器など、使用頻度が高く小さいものは往診カバンに入れて携帯しています。 顕微鏡、超音波検査機器、血液検査機器などの大きい機材は車に置いたまま、患者さんのおうちへ上がります。 画像では、中に何がしまってあるのか、分かりにくいですが… 【おくすり系】 注射薬、点滴、飲み薬、塗り薬、予防薬、療法食、調剤道具など 【診察のときに使うもの】 体重計、保定に使う猫袋や洗濯ネット、エリザベスカラーなど 【検査に使うもの】 顕微鏡、血液検査、超音波検査、血圧計、遠心分離機、など 【処置に使うもの】 注射器、カテーテル、消毒液、包帯、外科器具セット、酸素やネブライザー吸入器など 東洋医学の先生は、鍼灸セットなども。 【事務用品】 カルテや証明書などの書類、タブレット端末、プリンター、文房具など 【便利グッズ】 コロコロ、ウェットティッシュ、雨具、予備の着替えや靴、スリッパ、感染症対策グッズなど えー、書ききれません・・・。 とにかく沢山あります! 往診専門動物病院では、レントゲン装置や入院室、手術室はありません。 しかし、出来るだけ一般の動物病院と同じ治療をご自宅でも受けられるように、さまざまな工夫と努力を重ねています。 (可能な検査や処置は病院ごとに異なります、各病院へお問合せください) そして夏の車内は猛烈に暑くなりますので、薬や機械が痛まないよう、小型の冷蔵庫を用意したり、日除けの工夫もされていました。 協会所属の先生方、ご協力ありがとうございました!
慢性腎不全の自宅管理で、定期的に伺っている猫ちゃんのおうちからご連絡。 「先生、下痢です、ぴゅーって水下痢が続いています…泣」 慢性腎不全の猫ちゃんは、どちらかというと便秘傾向になります。 いち時的なものだといいなと思いつつ、初日は便検査と対症療法を実施しました。 …良くなりません。 「腎不全の他にも病気を発症してしまったのですかね…下痢が続くなら、血液検査と超音波検査をしましょうね。そういえば、いままでも何度か軟便の時ありましたよね?」 と問いかけると、 「そうです、うんちを緩くする薬を飲んだ時だと思うのですが…」 と言いながら、猫ちゃんの管理ノートを出してきてくれました。 腎不全で食べムラのある猫ちゃんなので、飼い主様が投薬記録と一緒に毎日、その子が口にしたものをメモしている素敵なノートです。 振り返ってみてみると、軟便の日のおやつの欄には“カニカマ”の文字が。 ここ数日はドライフードを食べてくれず、“カニカマ”が食事のメインになっていました。 「…もしかするとカニカマが原因??」 病院と検査が大の苦手な猫ちゃんなので、まずは“カニカマ禁止”から始めてみることになりました。 すると、驚くほど見事に下痢が止まりました!! 飼い主様の素敵ノートがなければ、そしてそれを一緒に開いて経過を追う、往診ならではの飼い主様と獣医師の距離の近さがなければ、きっと検査・検査でなかなか下痢は解決しなかったと思います。 一般の動物病院ほど機器設備は揃っていないですが、往診専門病院ならではの強みもあります。 大事なペットのために、記録をとっている飼い主様はたくさんいますよね。それはとても大切な、その子の蓄積データです。ぜひ見せてくださいね! ※今回ご紹介した猫ちゃんは、カニカマ(ペット用)が体に合いませんでしたが、大丈夫な子もたくさんいます。猫ちゃんの体調をみながら与えることに問題はありません。
痒みの原因は、犬小屋にあり!? 都心部ではマンションなどの集合住宅でも飼いやすい小型犬や猫が人気ですが、郊外では敷地を広く活用できるため、のびのび外飼いのわんちゃんも多いです。 先日、こんな相談がありました。 2週間程前から急激に皮膚炎が進行し、全身掻き壊してひどい状態。外飼いの犬なので野生のタヌキから何かうつったかもしれない。 とのこと。 タヌキ、皮膚炎、でまず最初にピンと来るのは疥癬症(かいせんしょう)です。 疥癬症とは、ヒゼンダニというダニの感染が原因で起こる皮膚炎です。 往診に伺い玄関先に車を停めると、さっそく庭先で吠えてお出迎え。 番犬としてしっかりお仕事してますねー。 そのわんちゃんは、遠目でもわかるほど脱毛が進行し、特に大腿部と四肢でひどい様子でした。時々後ろ足で体を掻きむしっています。 うーん、これはかなり痒そうだ。 痒みを伴う皮膚炎を起こす病気はいくつかあるのですが、タヌキが犬小屋に入り込んでいたのを見たという稟告と症状の経過から、今回は疥癬症を疑って駆虫薬を処方しました。 結果、皮膚炎は2週間ほどで良くなり、1ヶ月後には毛も生えて見違えるほどになりました! しかし原因となるダニとの接触を避けなければ再感染し症状を繰り返す可能性があります。 わんちゃんが普段過ごしている小屋には囲いがありませんでしたので、野生動物の侵入を防止するため柵や網を張っていただくようアドバイスいたしました。 次回お伺いすると、DIYされていました! これでタヌキさんが入り込むことはないでしょう。 また、外飼いでは虫に刺されやすかったり、ネズミなどの小動物が侵入する可能性もありますので、フィラリア症の予防、ノミやダニの予防、ワクチン接種なども継続して行っていただくといいですね。 往診での診察は、ご家庭でのペットの飼育環境を見てお話しできるところも魅力のひとつです。 今回のような外飼いのわんちゃんだけでなく、トイレのしつけについての相談ができたり、介護をしている子や多頭飼いの子たちの住環境についてもご相談いただけます。 特に猫ちゃんの場合は尿路系疾患が多く、トイレの大きさや設置場所、水のみ場の状況も重要なポイントになります。トイレの設置数を増やしたら、なかなか治らなかった膀胱炎がおさまった、なんてことも。 このように往診獣医師は病気の治療だけでなく、生活環境を見直し、健康維持にお役に立てるようなアドバイスも行っております。 うちの子のおうちも見てもらいたい!と思った際は、お気軽に往診専門動物病院へご相談ください。
こんにちは! 今日はおうち看護の工夫、第2弾です。 おうちとペットの数だけ、できること・できないことがあり、看護の工夫は様々です。 他の皆様のお役に立つかも、と思い、その工夫を共有させていただきます。 今日のご紹介は、歳を取って踏ん張りがきかず、ご自宅のフローリングで滑ってしまう柴犬さんです。 あまり気にしない子だと、滑り止め付きのわんちゃん用の靴や靴下を履いてくれる子もいます。でも気にして外してしまう子が多いですよね… 床材を替えられるなら最高ですが、そうもいかないことも多いと思います。 今回の柴犬さん。 市販の肉球に貼る滑り止めを使って、足が流れず歩けるようになりました! 市販のものは、肉球すべてを覆うものですが、これだとかなり気にしてしまうとのこと。 飼い主様がご自身でカットして(写真の〇の部分)、一番大きな肉球にのみ貼っています。 こんな小さく思えるひと工夫で、本人も気にせず、そして滑らすにフローリングを歩けるようになりました。 困った際のヒントになれば嬉しいです!
大型犬のトイレ問題 寝たきりになったらどうしよう!? それは、14歳のスタンダードプードルの飼い主さんからのお電話でした。 なんと3日間おしっこが出ていない、とのこと。 えええ、、3日間もおしっこ出ないの?ほんとうに?? 驚きながらも経過を詳しく聞くと、数日前から急な眼球振盪とふらつきで立つことができず、寝たきりになってしまったそうです。 体重が24kgあり、飼い主さん(女性)が抱えて車に乗せられず、通院が困難に。 近所のかかりつけ動物病院でお話だけしたら、おそらく特発性前庭疾患だろうということ。 激しい嘔吐でごはんもお水も摂取できていないため、点滴剤と注射セットをもらって、発症からの3日間は自宅で皮下補液をしている。ということでした。 ところが3日目になっても、おしっこが出ない! かかりつけでは往診をやっておらず、インターネットで往診動物病院を探して、こちらへ電話をしたのだそうです。 膀胱におしっこが溜まっているかどうか、診てほしい。 おしっこが溜まっているなら圧迫やカテーテルで出してほしい、とのご依頼でした。 緊急性が高いと判断し、お電話の後すぐに往診へ。 診察をしてみると、膀胱はパンパンになって硬く張っていました! これは、かなりつらそうだ、、、。 この子は普段の排尿はお外でしているとのこと。 どうやら自力で立ち上がれないこともあって、トイレを我慢してしまっていたようです。 これ、けっこう大型犬あるあるなんです。 普段、お散歩中に外で排泄している子は、外に出るまでずっとおしっこを我慢してしまうんですよね。 けれども具合が悪くて立てない大型犬を、外に連れて行くのは至難の業です。 もし入院中であれば、尿道カテーテルを設置してしまうところです。 このスタンダードプードルさんも、カテーテルを通して尿を抜いてあげることにしました。 (硬くパンパンに張った膀胱に対して圧迫排尿をすると、膀胱に過度な圧力がかかり破裂してしまうことがありますので注意が必要です。) カテーテルを入れるとすぐに尿が出てきました。 何度もシリンジで引いて、どんどん抜いていきます。 抜いても抜いてもなかなか空になりません。 ペットシーツがどんどん重たくなっていき、、、 なんと、700cc近く、抜けました!! 1日に250cc点滴をしていたので、摂取した水分くらいは尿が溜まっていたようです。 抜去後は、下腹部がすっきりペタンコになっていて こんなに溜まってたんだね!と飼い主さんも驚いていました。 今回、おしっこが出ない原因は単に我慢していただけ、ということになりますが、我慢しすぎると腎臓に負担がかかってしまいます。 また、尿道結石が詰まって尿が出ない場合(尿道閉塞)、早急におしっこが出るように詰まりを解除してあげなければ命に関わります。 そのほか、尿が作られていなくて出ていない、ということであれば急性腎不全の可能性もありこちらもすぐに治療が必要です。 このスタンダードプードルちゃんは、その後も自然に出せるようになるまで毎日カテーテルで尿を抜くことになりましたが、現在は前庭疾患の症状もおさまり問題なく排尿できています。 後日の血液検査で腎臓に異常がないことも確認できましたので、ほっとひと安心でした。 1日以上おしっこが出ていない、という場合は、すぐに治療を受けるようにしましょう。 通院が難しい場合は、迷わず往診専門動物病院へご相談ください!
往診で良く聞く単語! 「うちの猫、キャリーに入れられなくて、通院ができないんです…」 通院できないなら、往診という選択肢があるから、普段は入れなくてもOKです! でもこのご時世、いつ災害に直面するかはわかりません… どうしてもキャリーバックに入ってもらおうと格闘するときがくるかもしれません。 猫ちゃんのキャリーバック慣れは、できます! しつけが難しいと言われる猫ちゃんですが、実はちゃんと覚えてくれます。 キャリーの中は嬉しいことがある、と根気強く教えてあげてください。 ・キャリーの中に毎日1回、特別におやつを置いておく ・キャリーの中でごはんをあげる ・キャリーの中にお気に入りのベッドを入れておく 突然、がしゃん!とキャリーの扉を閉めると、怖い気持ちが生まれると思うので、まずは自由に出入りできる場所・嬉しいことがある場所という状態を保ってみてください。 ブログの写真は、キャリー大嫌いな兄弟が、ちょっとづつ頭を入れられるようになってきたものです🐱