執筆者:るい動物病院 院長 山口 真紀子 往診医療を始めて感じたことは、『実は飼い主さんは、獣医師に聞きたいことがたくさんある』ということです。施設で診察台を挟んで話をするときは、基本的にはその『病気』についての話になります。初診であれば今の体調がどうなのか、再診であれば治療の経過が良いのか悪いのか。下痢で通院すれば、聞くことはお腹の調子のことだけ。皮膚で通院すれは、聞くことは皮膚のトラブルのことだけ。寝たきりでがで床ずれができた場合、床ずれの治療のことだけ。 動物病院は、次に待たれている方が待合室にいることもあり、あまりいろいろなことを聞けない、というのが飼い主様の本音のようです。 往診診療は基本的に獣医師一人で診察から会計まで行いますので、飼い主様と接する時間や対話の時間が長くなります。 『先生、ちょっと聞いていいですか・・・?』という一言から始まり、下痢であれば、 『このフードを与えているが、それでいいのか』 『おやつはどのくらいあげていいのか』 『今度、再発しないために気をつけることはないのか』皮膚病であれば、 『シャンプーはどのくらいすればいいのか』 『食事で気をつけることはないのか』 『実はこのサプリメントを与えいるが大丈夫なのか』寝たきり介護であれば、 『ベッドはこの素材でいいのか』 『体位は何時間おきに変えればいいのか』 『過ごす場所はリビングのこの位置でいいのか』 『部屋の温度はどのくらいが適切なのか』 『起こすときにどのように介助すればいいのか』 話し出すと、堰を切ったように聞きたいことがあふれ出す飼い主様もいらっしゃいます。飼い主様は、体調を崩してしまった我が子についてや日頃の健康管理について、実は沢山の不安を抱えているのだなと感じます。 ほんの些細な事・わざわざ獣医師に聞くのは申し訳ないかなと思われることが、実はそのペットの健康維持や、病気の家庭での管理や付き合い方において、とても大切な情報であると感じることもしばしばです。 往診診療は診察台の上で行う診療と違い、ペットに緊張感がないため、『ふだんの素の表情や行動』を見ることができますので、きめの細かいアドバイスが可能かなと思います。 往診を呼ぶということを、少しハードルの高いことだと感じずに、お困りごとがあれば、もっと気軽にお声掛けいただければ嬉しいです。
執筆者:おうちdeペットクリニック 院長 渡邊(わたなべ) 遥 近年、人と同様に犬猫の高齢化が進み「ペットの緩和ケア」や「ペットの看取り」という言葉を目にすることが多くなりました。緩和ケアとは、病気や治療による辛さや苦しみを和らげ、ペットの生活の質を向上させるケアとご家族の心のケアを指します。 ●緩和ケアのタイミング 多くの方は「緩和ケアは治療を諦めてから始めるもの」と考える方がいらっしゃいます。ですが、病気の診断時や治療の初期から、基本的な緩和ケアを受けることが可能です。人ではがん患者に対する早期の緩和ケアが生存期間を延ばす可能性があるとされています。 ●緩和ケアのプラン作成 緩和ケアは、ペットの生活の質を評価し、身体的および感情的な苦痛に対処するための計画を立てます。計画には、下記のようなことを考慮します。 ○ご家族の思い ○病気の評価や治療内容、苦痛の評価 ○生活環境やご家族のライフスタイル ○診察頻度とコスト、獣医師との連絡手段 ○葬儀や死後の準備 ご家族やペットの状況に合わせたケアを提供するために、定期的な診察や獣医師を混ぜての話し合い、時には看護の代替サービスの利用を提案することもあります。 ●毎日の記録と獣医師とのコミュニケーション ペットの活動量や飲食、排泄の様子を毎日記録し、獣医師と定期的に連絡や診察し、ケアの評価をしていくことが大切です。ケアの中でご家族の直感も貴重な情報として取り入れることも大事ですので、質問や不安なことは獣医師に伝えることをお勧めします。訪問診療では質問しやすい環境が整っていますので、気軽に相談してください。 ●終末期ケアの考え方 どんな子たちにも、最終的には「終末期」となる看取りの期間があります。当院では、強制給餌などの無理な処置を避け、最低限のケアを行います。「皮下点滴」での水分補給を望まれる方もいますが、脱水が最終的に進むと意識低下し、苦痛を感じにくくさせるという報告もあります。終末期での過剰な点滴は余計に苦しみを悪化させる場合もあるため、状態を見極めながら、ご家族とお話し合いを重ね必要最低限で行うようにしています。 ●自然死と安楽死の選択 動物さんの最期の迎え方として、自然死を選ぶか、安楽死を選ぶかはご家族によって異なります。どちらが正しいということはなく、緩和ケアや終末期ケアを通じて、ご家族と獣医師で何度も話し合いながら決定していきましょう。直接的な声はわからなくとも、今まで過ごしてきた時間や生活の中で、何したいのかな。こんなこと考えているのかな。と感じたこともあるのではないでしょうか。そのご家族の感覚と、獣医師として診察した時の「苦しみや苦痛」と緩和の手段を併せて、「安楽死」を獣医師から提案することもあります。 どんな死の選択にせよ、体は小さくとも大きな存在の死は悲しくて、必ず後悔します。でも少しでもその後悔を減らせたら。もっとサポートできないのか。と、たくさんのご家族の「死」を通して、私たち獣医師も日々精進していこうと感じます。
執筆者:いろどり往診動物病院 院長 中山 舞 往診をはじめて、病気自体のことはもちろんですが、同じくらいご家庭で工夫できる「生活環境」のことを気にしてくださるご家族が多いと感じる日々です。 ● 室温のこと 犬が苦しそうということで向かったおうち。部屋が暑く、体温調節のためにはぁはぁしていた様子。室温の調整で解決しました。 往診を始めて、室温は〇℃の設定で!と一概に言えなくなりました。日当たりが良すぎる部屋、空気がこもる部屋、部屋は適温だけれどフローリングは冷えている・酸素室内は暑い・動物に何枚も毛布を掛けている…おうちごとに、それぞれのアドバイスが必要なことに気づかされます。 ● トイレのこと 高齢になっても終末期でも、排泄はトイレでしたい!という意思を持つ子は多いです。トイレを生活場所の近くに設置する、トイレの段差をなくす・浅い段ボールで即席トイレを作る、猫砂を少なくして足場を安定させる、などちょっとした工夫で、トイレに自力でいきたい想いを叶えてあげるきっかけをつくれます。 ● ごはんのこと 「食事の介助の仕方」「嗜好性の良いごはん」「このごはんをあげているが大丈夫か」「ごはんを減らしているのに痩せない」などなど。往診ではその子の病状に加えて、その場でフードの量・食事時の体勢・食器や周りの環境までみせていただけます。より適切なアドバイスができますよ。 生活環境の質問の中でも、介護はみなさん試行錯誤です。日々頑張っているご家族の発見が、往診獣医師を通して他のご家族の役に立つこともありますから、たくさん話を聞かせてほしいと思っています!
執筆者:ホームズ動物往診所 院長 原野(はらの) 亮(りょう) 2024年元旦に起きた能登半島での大地震、報じられた被災状況に胸が痛むとともに、自然災害の恐怖を改めて思い知らされました。また、伴侶動物を伴う避難生活における苦難も、数多く報じられていました。そこで今回は、そのような非常事態での苦難を、少しでも軽減できるよう、常時における備えについて簡潔にお伝えできればと思います。 災害対策として想定する被災状況 ご自宅が倒壊および浸水リスクがある、また、電気ガス水道などの使用が困難となり避難生活が必須 製造や交通インフラがストップし物流が停滞する 平常時に備えておくこと <迷子対策> ペット手帳作成(写真付きで、マイクロチップ番号、動物の特徴や既往歴などを記載したもの) マイクロチップ装着及び登録 <感染予防> 狂犬病ワクチンおよび混合ワクチン接種 フィラリア症予防、ノミ、ダニ対策 避妊去勢手術 ブラッシングやシャンプー、トリミングなどで清潔を保つ <トレーニング> クレートやキャリーケース、ご自宅以外の環境、ご家族以外の人や動物の中で穏やかに過ごせるようにしておく トイレを決められた場所でできるようにしておく 同行避難訓練 <その他> 近隣の避難所における同行避難の可否や注意点など、自治体のホームページなどを参照に確認しておく 一時的に犬猫を預かってもらえる家族や知人を近隣、及び遠方に確保しておく 家具の転倒防止対策や窓ガラスの飛散対策 避難グッズ例 ペット手帳 キャリーケース(小型犬や猫には両手が空くリュックタイプがおすすめ) リード 水やフード(長期保存可能で最低5日分) 食器 医薬品 ドライシャンプーやブラシなどの手入れグッズ おもちゃ(落ち着かせる為) ビニール袋(多目的) トイレ(猫砂やシーツ、新聞紙など) タオル(防寒や目隠し) すでに備えている方も多くいらっしゃるかと思いますが、この機会に一度、見直してみてはいかがでしょうか。
執筆者:往診専門 ルル動物病院 院長 齋藤 亨 慢性腎臓病は犬猫ともに患う病気で、現在のところ完治する病気ではありません。早期に発見、治療を開始することで進行を緩やかにすることが重要となります。 水をよく飲むようになった、尿が薄く量が多くなった、食欲不振が続く、吐くことが多くなった、といった様子が見られることがあります。このような症状がある場合には慢性腎臓病以外の疾患も考えられますので受診していただくことをお勧めします。 脱水しがちになる慢性腎臓病では体調を維持するうえで点滴は有効な治療のひとつになります。なかでも皮下点滴は練習をしていただくことで飼い主様自身がご自宅で実施することもできるため、 飼い主様と動物の通院の負担を考えてご自宅での皮下点滴を勧められる機会もあるかと思います。 往診での皮下点滴 往診で皮下点滴を実施させていただく理由の多くは動物にとって通院がストレスになっているので自宅で点滴をしてほしいというものです。ただ飼い主様自身で皮下点滴をできる場合でも不安、怖いなどの理由で往診を希望されることもあります。 また、皮下点滴を実施する特定のご家族が動物に嫌われてしまう場合があります。動物のために行っている皮下点滴でご家族が嫌われてしまうことは闘病生活をより辛いものとしてしまいます。長い闘病生活になることも多い慢性腎臓病です。辛い思いをしながらの闘病生活は飼い主様はもちろん動物にとってもよくありません。精神的な負担の軽減や良好な家族関係の維持というのも長い闘病生活を続けていくうえで重要になります。 毎回ではなくても時々代わりに皮下点滴してほしい、不安なので皮下点滴の指導を改めてしてほしいなどのご要望でも構いません。ご自宅での闘病生活に負担を感じた時、気軽に最寄りの往診獣医師にご相談いただければと思います。
執筆者:金乃時アニマルクリニック 院長 長江 嶺 高齢なワンちゃんネコちゃんの往診では、手術や抗がん剤治療を受けつつ自宅でフォローをするケースと積極治療をせず緩和ケアに努めるケースがあります。 中でも根治や長期の延命が難しい場合、特に移動が困難な大型犬では、通院をする苦労と在宅ケアの不安との板挟みに悩む方も多くおられます。 実際に往診をしていると、「これは痛みによる行動なのか」「根本治療ができないとしても、急変した場合なにかしてあげられることはあるのか」そういった疑問を抱えながら飼い主さんが在宅でのケアに奮闘されていることを痛感します。 がん=必ず痛みがあるわけではありませんし、痛みの他にも倦怠感や吐き気、下痢など様々な症状に都度対処していかなくてはなりません。 例えば体位変換ができない犬の息が荒くなった時、痛みなのか、呼吸苦なのか、排尿を我慢しているのか、その判断は試行錯誤でわかることもありますが、一番長い時間その子と一緒にいる飼い主さんや、自宅での様子を知る獣医師にしか感じられない変化もあるかもしれません。 往診か病院かを選択する時、どちらかに絞らなければいけないと考える飼い主さんもいらっしゃいますが、全くそのようなことはありません。 手術や入院は病院で、自宅でもできることは往診でと思っていますので、その子や飼い主さんにとって一番楽な選択をしていただければと願っています。
執筆者:さくらアニマルクリニック 院長 柿崎 舞 犬の寿命が延びて高齢化がすすむとともに、認知症も増えています。犬の認知症は10歳頃から見られ始めることが多く、12歳以上で発症率は急増していくと言われています。 洋犬よりも日本犬や日本犬系のミックスが認知症になりやすい傾向にあり、中でも柴犬の認知症のご相談が多いです。 認知症は予防が最も大切ですが、「年をとったから仕方がない」とみなされて、早期に動物病院に相談される方は少なく、発見が遅れがちです。 早期に行動変化のサインを見つけることができれば、加齢に伴う脳の変化と行動の異常をコントロールでき、進行を遅らせて飼主様と犬の快適な生活をより長く保つことが可能になります。 ● 夜中に意味もなく、単調な声で鳴き出し、止めても鳴き止まない。 ● 目的もなくひたすら前に進もうとする、ぐるぐる歩き回る(旋回運動)。 ● 狭い所に入りたがり、自分で後退できないで鳴く。 ● 呼びかけに反応しない、どこか一点を見つめているなど。 ● 今までできていたことができなくなる。トイレの失敗など。 ● 良く食べて、下痴もしていないのに、痩せてくる。 このような行動変化のサインが現れている場合、認知症かもしれません。 認知症の症状は多くのケースで徐々に起こり、ゆっくりと進行していきます。しかし高齢犬で何らかの病気が悪化し、回復した後で急に症状が出現することもあります。 飼い主様自身は愛犬が認知症だと診断されると、ショックを受けられると思いますが、症状に応じて必要な対処をすることで、認知症を上手にコントロールすることができます。 認知症の犬においての終わりの見えない介護生活は、身体的精神的に大きな負担となることが多いと思います。 特に夜鳴きは、家族の生活に非常に大きな負担をかけ、途方に暮れます。 往診では生活環境を見せていただき、飼い主様のご希望をお聞きして、治療や介護のアドバイスができることが多いですのでお困りの飼い主様は一度ご相談ください。 またこれから愛犬がシニア期を迎える飼い主様は、適度に刺激のある生活を心がけ、食事内容の見直しやサプリメントを取り入れるなど認知機能の健康を維持するための積極的なケアをぜひご検討ください。
執筆者:動物往診+在宅ケアサービス にくきゅう 院長 立石 絵美 「東洋医学」と聞くとなんだか難しい言葉に聞こえますが、「鍼・お灸・漢方薬」と分けて考えるとわかりやすいでしょうか。 西洋医学では一つの症状に対して1つの薬剤を使用することが多く行われます。(もちろん例外もあります) これに対し、東洋医学では表面に表れている症状と、原因になっている体質と両方を見極め、どちらの治療も同時にケアしていく、という考え方に基づいて治療を行います。 心臓が悪くなると心臓の薬、肝臓が悪くなると肝臓の薬、というように、年齢を重ねると次々に薬の処方が増えていきますが、そのような状態になってしまった根本的な原因は、実は同じ体質の変化から来ていることも少なくありません。 例えば「下痢」という症状ひとつを見ても、若くて健康体の子の急性の下痢と、食が細く痩せ気味で震えている子の慢性の下痢では、同じ「下痢止め薬」で治療する、という考え方で本当に良くなるのでしょうか? 東洋医学ではこれを「同病異治」と言います。つまり、症状が同じでも、それが起こった原因は異なるため、違う処方が必要になるのです。 仮に同じ薬を使う場合でも、その子の体質や状態によって処方の量を変えることもあります。 クローン技術で作成された動物でないかぎり、1頭1頭は違う個体であり、体質も性格も薬に対する反応も異なります。ですので、その子の状態だけで無く体質や性格、場合によっては毛色や誕生日、家庭環境などを総合的に判断して診断と治療を行う、これが東洋医学の特徴です。このような理由から、東洋医学は「オーダーメイドの治療」と言われます。 また、身体は食べたもので作られます。当然のことですが、これを意識して毎日の食事を用意している飼い主さんはごく少数です。毎日同じペットフードを与え、時々オヤツや人の食べ物を与える、という方がほとんどだと思います。 「獣医さんでこのフードを与えるように言われたので」と処方食を長期間続けている子も多く見かけます。薬の処方と同じように、1頭1頭体質が違うのに、同じ病気だから同じフードを何年も与え続ける、これが本当に健康に良いと思いますか? 実は漢方薬の材料になっている生薬と普段私たちが食べている食材には似たような効能を持つものが多くあります。 生まれ持った体質の他に、身体を作るのは食べ物です。旬の食材はその季節に合った特徴や栄養素を持っています。いつものフードに季節や体質に合った食材をプラスすることで身体を整える手助けができます。完全な手作り食はハードルが高いですが、できることから始めてみてはいかがでしょうか。 食事の相談は動物病院では時間がかかるために倦厭されがちです。実際に与えている食事を確認しながら、他の患者さんに遠慮せずに相談ができるのが往診のメリットです。 病気ではなくても往診を活用して、大切な家族の健康維持を考えるきっかけになれば嬉しいです。
執筆者:ほしのどうぶつクリニック 院長 星野 浩子 「動物にも鍼灸治療があるのですか?」と質問されることがよくあります この10年ほどで動物の東洋医学的な治療を行える獣医師が増えてきました。 近年、ご家庭で飼育される犬や猫などの高齢化が進むとともに、心臓病、腎臓病、肝胆疾患、消化器疾患、関節疾患、ガンなど多くの疾患に悩まされることも増えています。 その原因には遺伝的な問題、毎日食べているフードに含まれる添加物や酸化、化学物質への暴露、ストレスなど様々な要因が絡み合っています。 動物の東洋医学ではハリやお灸、マッサージや食養生、漢方薬治療で動物が本来持っている自然治癒力を高め、病気になりにくい身体づくりを目指します。 それには日ごろからのケアが大事になってきます。往診ではまだ病気ではないけれど、健康な体づくりをしたい(未病治)、今病気があるが治癒力を高めたい、お薬を減らしたい、手作りごはんで健康を取り戻してゆきたいなどのご要望にお応えしています。 鍼灸治療や食養生指導、おうちでのお灸の仕方や環境改善などへのアドバイスを行うことで、おうちケアをより充実させてゆくお手伝いをしています。特にお灸は身体の痛みをとり、血流も良くなり、ストレス軽減につながります。定期的なケアで病気になりにくい身体づくりを目指しています。
執筆者:よつば動物病院 院長 武波 直樹 人と同じように、犬も猫も熱中症はとても危険な病気です。ある調査では熱中症が一番多いのは6月で次いで5月、7月と続いています。理由としては、この時期はまだ暑さに慣れていないのでより低い気温で発症しやすいということと、本格的に暑くなり始めた8月、9月は飼主さんが十分に気を付けているので発症しにくいからだと言われています。 また散歩や外出時に熱中症になることは想像しやすいですが、室内にいるときに犬も猫も熱中症の症状が出ることが多いと言われています。 熱中症になると体温が上がるので、犬だとハアハアと呼吸が早くなります。猫だとハアハアと口を開けて呼吸しないこともありますが、犬も猫もぐったりと元気がなくなり、息苦しそうにすることが多く、よだれがいつも以上に出ることもあります。 そうなったときに動物病院に連絡することはもちろんなのですが、対処法として常温の水で体を濡らすのが有効です。スプレーで体の表面を濡らしたり、濡れたタオルで体を覆って扇風機で送風したりし、気化熱を利用して徐々に冷却することが有効です。冷水を使うと表面の血管が収縮して温度の高い血液が中にこもってしまい体温がなかなか下がらないので注意が必要です。大切なことなのでもう一度言いますが、『常温の水』です。保冷剤を使う場合はタオルで包み、冷たくても収縮しない太い血管の走っている首元、脇の下、太ももの付け根を冷やしてあげましょう。 熱中症から大切な家族を守るために、ぜひ頭の片隅に留めておいてください。
執筆者:虹の橋どうぶつ病院 院長 鈴木 愛弥 猫ちゃんより通院がしやすいわんちゃんはターミナルケアでの往診が多いと思われるかもしれません。しかし予防や定期健診も同様に多い依頼です。日々の健康管理に往診を役立てている子をご紹介します。写真は14歳のヨークシャテリアのあめちゃん(仮名)。心臓病のため血圧のお薬を飲んでいます。かかりつけの病院はあるが真夏の外出が心配なので往診で薬の処方と爪切りを、という依頼でした。 ちなみに病院では大暴れして先生や看護師さんを困らせてしまうんです、とのこと。確かに、あめちゃんは飼い主さんに抱っこされていても激しく動いてしまい爪切りがとっても大変でした。そこで、おやつを食べるのに集中している間に爪切りと足裏のバリカンをやる作戦に。毎回、飼い主さん2人+獣医師の3人がかりですが、お手入れがおうちでストレスなくでき(ついでにおやつも食べられて)、飼い主さんもあめちゃんも大変喜んでくださいました! また、往診では落ち着いて検査を受けられることもメリットの一つです。心拍数や血圧を測るときに緊張していると数値が高く出てしまうのですが、自宅でリラックスしている時に測れるので、病院内よりも正確に測定できます。暑い季節だけ往診でということだったのですが、以来、毎月のお手入れと健診をご自宅で行っています。 このようにかかりつけ動物病院と往診を併用することで、通院の負担を減らし、病気の早期発見にも役立つと考えています。少しでも気になることがあれば、まずはワクチン接種や健診などで往診獣医師にご相談ください。
執筆者:ワンニャンモバイルクリニック 院長 結城 真浩 現在、3歳以上の犬猫の8割が歯周病になっていると言われています。歯磨きなどのデンタルケアが大事なのはわかるけど、口を触らせない、嫌がるから毎日やるのはしんどいなどの理由から続かないことが多いと思います。 歯ブラシを使った歯磨きはデンタルケアのゴールデンスタンダードで間違いはありません。しかし、嫌がる我が子に毎日やるとなると、お互い気が滅入ってきます。根気強くトレーニングして歯磨きが好きになるようにするのも大事ですが、できる範囲のデンタルケアをコツコツと続けるというのもありだと思います。デンタルガムやデンタルサプリメント、デンタルグッズ、何でもいいと思います。我が子が受け入れてくれるものがきっとあると思います。 そして、定期的に口腔内をチェックし、ある程度歯石がついてしまったら、麻酔下でのスケーリング(歯石取り)をするという流れはいかがでしょうか。欧米では生涯に1~2回の麻酔下スケーリングは一般的になってきています。 ●ここで注意点 歯磨き効果があると思って鹿の角やヒマラヤチーズなど、カッチカチのものを与えている飼い主さんがいたら、これは絶対にやめてもらいたいと思います。かなりの確率で歯が折れる、破折という状態(奥歯が縦に板状に折れる平板破折が多い、特にワンちゃん)が起こります。ある日急に口臭が気になるようになったら破折の可能性がありますのでご注意ください。 次に、無麻酔スケーリングをしているという話をしばしば聞きます。これもやめたほうがいいと思います。麻酔のリスクが心配という気持ちも分かりますが、動かないようにがっちり保定され、意識がある状態でゴリゴリと先の尖ったスケーラーで削られるわけです。かなりの確率でそのトラウマにより、家でのデンタルケアが不可能になります。また、無麻酔スケーリングでの事故の報告も多くあります。そんなリスクがありながら一番大事な歯周ポケットの歯石は取れていないので、終わった後も口臭がするという話もよく聞きます。 ●ワンちゃんネコちゃんも歯が命 歯周病は心臓や腎臓疾患を悪化させるリスクがあります。我が子が受け入れてくれるデンタルケアを一つでも見つけていただき、それを継続してもらいたいと思います。また、定期的な歯のチェックや健康相談は往診でも対応可能です。気になったらまずはご相談下さい。 健康な歯で長生きしましょう!
執筆者:るぼんず 院長 野村 弓圭里 時折横切るキツネや鹿に気をつけながら牧場に入ると、馬の獣医師の先生の往診者とすれ違います。入れ替わりで私が診察するのは馬ではなく、そこにいる猫たち。 ここ北海道の日高町は馬産地で、牛馬問わずたくさんの牧場があります。そしてそこでたくさんの猫が暮らしています。猫たちは牧場で働く方々の癒しの存在でありながら、ネズミを追い払う仕事をしたり、SNSでバズってアイドルのようになったりと大忙しです。今回はそのような日高の牧場で暮らす猫たちにスポットを当ててみたいと思います。 ●外暮らしの猫たちの困りごと 普段は屋外にいる猫たちにとって、寄生虫感染はよくある困りごとの一つです。猫同士でうつるシラミ、野生動物が運んでくるダニ、シラミやネズミが原因の条虫など…予防できるものではありますが、予算や耐性の心配から状況に応じて薬を処方します。その子の状態にもよりますが、年に1、2回薬を使うだけでもうまく健康を維持できているようです。 猫エイズ(FIV)にも悩まされました。比較的若い年齢で免疫不全になり、亡くなってしまう子が続きました。少しずつ不妊手術が浸透しオス同士の血を見る争いが減ったのか、検査でFIV陽性が出ることが減りましたが、FIVキャリアの子も、免疫力の低下を早めにキャッチして対処してあげることが重要と考えます。 ●厳しい冬を乗り切る工夫 冬にはもちろん厳しい寒さが待っています。日高町の門別地区は太平洋側で、そこまで雪深くはないのですが、それでも飲み水は凍るし小さな体は体温が奪われてしまいます。そこで休憩室で暖を取れるようにしたり、飲み水が凍らないようにする工夫がされています。この飲み水が凍らない工夫は病気の予防としてもとても重要で、現地で診察することで私のほうが勉強になることもあります。こうして寒さ対策を取ることで数々の冬を乗り越え、18歳現役でネズミ取りができるような猫たちも存在しています。ちなみに凍傷やしもやけになってしまった猫に出会ったことはまだありません。 たとえ敷地が広かったとしても、交通事故に遭ってしまう子が一定数いるのも現実です。やはり伴侶動物である猫は室内で生活が基本ということは念頭に置きつつ、みんながみんな完全室内でというわけにいかない中でも、できるだけ彼らの健康を維持できるよう、これからも往診で手助けしていきたいと考えています。馬や牛と同様に牧場の猫にも往診という手段があることを、生産者の方々にも喜んでいただいているようです。
執筆者:往診専門犬猫クリニックあしおと 院長 下瀬 昭広 「ノミ・ダニ予防だけなのですが…」どこか申し訳なさそうに往診のご依頼をされる飼い主様がいらっしゃいます。 確かに、往診では寝たきりの子、移動手段がない子たちを診察する機会が多いのですが、健康な子の病気の予防にも力を入れているので、お気軽にご予約ください。何かと忙しい春先は、フィラリア予防や狂犬病予防などで動物病院も混み合います。「忙しくて時間が取れない。」「元気は良いから、つい後回しになってしまう。」「多頭飼いだから大変。」そんな方も、往診ならご希望の時間にお家でリラックスして予防を行えます。もちろん、狂犬病予防注射やフィラリア病予防、混合ワクチン接種などと同時にご依頼いただけます。 暖かい春の季節は、お散歩でノミ・マダニが寄生するリスクが増えます。 ノミは気温や室温が13℃以上で繁殖をはじめ、20~30℃でさらに大量に繁殖します。ノミアレルギー性皮膚炎を起こすだけでなく、瓜実条虫という寄生虫の感染経路にもなります。また、子犬や子猫やシニア犬に大量に寄生し吸血することで貧血の原因にもなります。 マダニも春から秋にかけて活発になり、犬バベシア症や猫ヘモプラズマ症など犬や猫に関わる病気の感染源になります。 さらに、人間に対しても、近年、国内で複数の死亡例が確認されたSFTS(重症熱性血小板減少症候群)など恐ろしい伝染病を運んできます。 身の回りにあって実は怖いノミ・マダニの予防は、健康で幸せな生活に欠かせません。春の大事な予防をもっと身近に、往診でそんなお手伝いができれば幸いです。
執筆者:イース往診どうぶつ診療所 院長 木口 久幸 休み明けのある日、連日明け方3~4時まで働いた疲労の名残を腹にためながら、入院処置室の扉を開けると、点滴されている白猫が嘔吐しているのに出会わしました。それは獣医にとってはよくある場面なのですが、黄色っぽい吐物の中に見覚えのある物があります。 アセビ(馬酔木)の花です。知らない人には花に見えないような花ですが、「馬酔木」の字の通り、馬をも倒すほどの猛毒です。2~4月に白や薄いピンクの花を咲かせ、スズランに似ていて、公園や街路樹として見かけます。 その猫が吐いたのは花がら1つでしたが、それだけでも1頭の猫を瀕死の状態に追い込むのに充分だったのかもしれません。飼い主様にお聞きしたところ、かわいい鉢植えだからと誕生日に友人から贈られたそうです。幸い、その猫は回復し事なきを得ましたが、もし亡くなっていたら、そのご友人もどうしてよいか分からないぐらい不幸なことになっていたかもしれません。 私は少し歳をとってから大学に入り直し、獣医になりましたが、その前は小さな花屋をやっていました。場所も時代も違いますが、花屋さんで自分の扱っている花が、動物たちにどんな害を与えるか、知識を持っている方は皆無に近いでしょう。 獣医でも動物に毒性を持つ花の全てを知っている人は少ないかもしれません。今はスマホ1つで、大概のことは調べられます。(埼玉県上尾市の井上動物病院のHPにある「ペットに危険な植物」はお勧めですよ) これからの季節、クリスマスシーズンになれば街も華やかになり、ポインセチア、シクラメンなど窓辺に飾ると素敵ですね。でも、その花大丈夫?お気を付けください。
執筆者:まりこ動物往診所 院長 竹野 まりこ 膀胱炎には細菌性や特発性のものがあります。膀胱炎は、全年齢で起こりうる病気です。症状としては、頻尿、血尿、排尿困難、排尿痛、トイレ以外での排泄、二次的におこる尿道閉塞などが見られます。細菌性膀胱炎は、通常無菌的な膀胱内へ細菌が逆行感染することでおこります。尿道が長いオスよりもメスがなりやすい傾向にあり、犬では尿路感染症が主に関係し、猫では糖尿病や副腎皮質機能亢進症、慢性腎臓病、Felv/FIVなど基礎疾患がある場合もあるため、膀胱炎を疑う際には、検診など定期的に受診し他の病気がないかも見てあげましょう。 また特発性膀胱炎は、一般的に猫にはもっとも多いといわれており、その原因は動物を取り巻く環境的な要素が大きく、ストレスの強い生活をすることで発症します。特に飲水量が少なくなるようなドライフードのみの食生活や、飲水量が減少する季節の変わり目、トイレが清潔でない(気に入らない)、排尿を我慢させてしまう環境、肥満や神経質な性格なども要因としてあげられます。最近では飼育環境によるストレスや、食生活が原因のヤギの膀胱炎や尿石症(ひどい場合、尿閉になることも)も往診時によく見かけます。 これから寒くなる季節ですので、十分な飲水量の確保や、ストレスの少ない環境づくりなど、今一度振り返ってみてあげてください。往診では、ご自宅の飼育環境やいつもの動物たちを直に飼い主様と同じ目線で獣医師が共有できるので、一緒に考え問題解決に取組めます。お気軽にご相談ください。 また、年1~2回の定期的な健康診断(尿検査も含めて)は、症状が出る前の健康な個々の身体の状態(基準)を知ることでその子の病気の早期発見にも役立ちます。ぜひ、定期的な検診受診をお勧めします。
執筆者:メープルファミリー動物病院 院長 朝井 鈴佳 皮膚病に悩まされている犬猫が多い昨今、「皮膚病も往診頼めますか?」とお問合わせをいただくことがあります。緊急でも重病でもないのに往診頼んでいいのかな?と言うことなのですが、答えは「イエス!」です。 これまでに往診で出会った皮膚病の犬猫の中には、車に乗るだけで下痢や嘔吐する子、動物病院だと震えが止まらない子、車に乗せるのも大変な超大型犬や高齢の子たちがいます。またお子さんが小さくて動物病院に行く時間がない飼い主様や、運転免許証を返納されて動物病院に行く手段がない飼い主様など、往診ご依頼の理由は様々です。でも、そのような明確な理由がなくても皮膚病の往診はしています。 皮膚患部の診察をしながら、ご自宅でたくさんのお話をしていると、環境や食べ物などの見直しのヒントも出てきます。その結果、皮膚症状の良化だけでなく体質改善にもつながり、徐々に犬猫が元気になってくることもよくあります。また先日ご依頼があったのは、急に皮膚が真っ赤になった子の往診です。実はホットカーペットによる低温やけどだったのですが、その場で原因がわかり早急な対応ができたので、大事には至りませんでした。(低温やけどは命に関わるケースもありますので、皆様くれぐれもお気を付けください。) ご依頼を受けても日程や場所、犬猫の性格などを総合的に考慮した結果、心苦しくもお断りする場合もあります。でも往診のハードルはそんなに高くありません。「往診してもらえるかな?」と迷ったら、まずは気軽に問い合わせていただくことがとても大切だと思います。
執筆者:往診専門 森のくま動物病院 院長 大熊 慶子 「呼吸が苦しい」犬猫は、往診にはとても多い症例です。息が苦しい動物がカゴに入れられ、乗り物に乗って、待合で待って、知らない診察室で知らない人に囲まれるのは大変なこと。 ある高齢のチワワは、僧帽弁閉鎖不全症で肺水腫になり、行きつけの病院で「もうできることはない」と言われたそうです。最大量の心臓のお薬をもらっていました。肺水腫の治療は水を落とすこと。ここから先は、多量の利尿剤を注射して肺の水がなくなるようにするという治療になりますが、心臓はラクになっても脱水が腎臓に負担をかけるので、血液検査と入院治療が必要になります。 入院中に死亡することもあるので、 もう治療をしないでおうちに帰る判断も妥当でした。 一か八か、おうちの酸素室で飼い主さんに利尿剤を飲ませてもらい、 呼吸の苦しさの指標である、寝ている時の呼吸数をLINEで知らせてもらいお薬を増減しました。すると夜も眠れない苦しさだったのが、肺水腫から離脱することができたのです。腎臓の数値も問題ありませんでした。 これはとてもうれしいことでした。ご自宅にも酸素室は設置でき、 往診にもエコーと血液検査機器はあり、そして何より飼い主さんが大変優秀な動物看護士さんであった ことから、リモートで動物病院に入院しているような治療ができるのです。 心臓病、腫瘍、甲状腺の病気などで、胸水のたまる猫の治療も多く行っています。内科疾患の末期は良くなることばかりではありませんが、おうちで飼い主さんと二人三脚で、動物のために一番よいと思われる次の一手を打っていく、往診治療に大変やりがいを感じています。
往診獣医師協会の獣医師が、Sippo Festa 2023 に参加します! https://sippofesta.com/ ----- 開催日時:2023年6月24日(土)10:00-17:30、25日(日)10:00-17:00 会場:国営昭和記念公園みどりの文化ゾーンゆめひろば ----- 往診獣医師協会の獣医師によるわんちゃん健康相談会を行います。 開催場所:わんちゃん健康相談会ブース時間:終日相談料:無料予約不要(混雑している場合はお待ちいただく場合がございます) ----- わんちゃんのことで疑問やお悩みのある方、お気軽にお越しください✨ 往診ってどんな感じなのだろう…と興味はあるけどなかなか踏み出せない方も、 実際に往診の先生に会って、気になることを聞いたり雰囲気を感じてくださいね🍀 みなさんにお会いできるのを楽しみにしています!!
ヒトの世界では良く聞かれるようになってきた「緩和ケア」という言葉をご存じですか? 緩和ケアは治療を諦めること、がんの末期で受けるもの、と思っている方もまだまだ多いと思います。 がんになると、がん自体の症状以外にも、痛み・倦怠感などの身体の不調や、落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛を経験するといわれています。これらの身体的・精神的な苦痛を和らげるのが緩和ケアです。ヒト医療ではがんと診断された時から、並行して行われるようになってきています。また、がん以外の慢性病にも、この概念が定着しつつあります。 緩和ケアのメリットは下記↓↓ ・病気を知り、治療の選択を助けること(←ペットの場合、ご家族の選択) ・身体を楽にすることで日常を取り戻す、がん治療に取り組みやすくなる ・心の辛さを和らげることで前向きになる(←ペットの場合、ご家族が前向きになることで空気察知する能力の高いペット自身の不安が少なくなる) 動物も同じです。緩和ケアは諦めることではなくて、その子がその子らしく毎日を過ごすために必要なことです。 がんでも、その他の治らない病気でも、闘病中に身体は楽なほうが良いし、できる限り好きなことをして過ごしたいし、家族が辛い顔をしている時間が少ないほうが良い。大好きなおうちに居られる時間が長いほうが良い。 往診は、ご自宅に伺うので、ペットの生活環境について気付けることが多い・飼い主様が質問しやすい環境・通院ストレスがない、などのメリットがあります。闘病中のペットと暮らす皆様の、力になれるかもしれません。困りごとがあれば、ぜひご相談ください! ※写真は鼻腔内リンパ腫で闘病中の猫ちゃん。毎日大好きなマグロを食べ、お気に入りの洗面台で水を飲み、マイペースにおうちで過ごしています!!