今回は、外傷性後肢麻痺のわんちゃんの車いす製作をお手伝いしましたのでご紹介します! この子は事故により両方の後脚が麻痺してしまい、自力で歩けなくなってしまいました。 飼い主さんは、車いすについて教えてほしい、リハビリをお願いしたい、ということで往診での診察を依頼されました。 最初にご自宅に訪問したときは事故から1ヶ月が経とうとしているところでした。 医療センターでの集中治療を受け、幸い一命は取り留めたものの、食欲や元気がなく、、。 お散歩が大好きだったというこの子は、突然自分の体が思うように動かせなくなってしまい戸惑っている様子。とても不安げな顔をしていたのが印象的な子でした。 この子にもう一度歩けるようになってほしい、とにかく元気になってほしいというのが飼い主さんのお願いでした。 車椅子を製作している工房さんをご紹介し、後日、みんなで一緒に採寸をしました。 初めは進み方がわからず戸惑っている様子でしたが、1週間もすれば自分で行きたい方向に進めるようになりました!とのこと。 少しずつ外へ出るようになり、表情も明るくなった気がしますね。 すっかり食欲も戻り、今はリハビリや漢方治療などを頑張ってくれています!
人馴れしていない保護猫ちゃんの診察ってどうしてますか? 念願叶ってついに保護猫ちゃんをおうちに迎えることができ、この子を絶対幸せにするぞ!と心に誓って数ヶ月。 ようやく家に慣れてきてくれたころ、なんだか様子がいつもと違う?もしかして具合悪いのかな? まだ完全に心を許してくれた訳ではないのに、抱っこや触ることも難しいのに、どうやって動物病院へ行くか悩みますよね。 そんなときはやはり往診が便利ですね。 便利ですが、当然獣医師のことなんてもっと信用していない訳で(動物好きなのに嫌われる運命・・・泣) 簡単には診せてくれませんので、慎重に行わないといけません。 とにかく嫌がることはしない、ストレスを与えない!これが鉄則です。 依頼を受けたらまず、保護猫ちゃんの飼育歴や家での過ごし方を詳しく確認します。 保護された時の状況や時期は?どのくらい慣れてきたのか? 普段からケージに入っているのか?お部屋は猫ちゃん専用のお部屋なのか? 1番困るのは、ご自宅へお伺いしても、廊下や家具の間に隠れてしまって、姿さえ見えないこと。 なので、見えないところに隠れてしまう子は、獣医師が来る前に診察できそうな場所に移動してもらいます。 家全体の行き来を自由にしている場合は、入ってくれるケージがあればそこで待機。 ケージに入ってくれない場合は、できるだけ物がなく狭めのお部屋に移動してもらいます。 扉で仕切れる廊下スペースや洗面所を片付けて、そこで診察させてもらうこともあります。 もし移動させる事が難しいようならば、無理せず普段の様子をそのまま診させてもらいます。 診察の際は、飼い主さんのお話を伺いつつ、少し距離を取ってそっと様子を観察します。 いきなり触ろうとすることは絶対ありません。 様子を観察するだけでもわかることは色々あります。 体格や被毛の艶などから栄養状態はどうか。 呼吸のし方や歩き方におかしなところはないか。 皮膚炎がないか、目ヤニやヨダレなど汚れているところはないか。 こちらの動きに対する目や耳の反応はどうか。 シャーっと言って口を開けてくれたら、粘膜の色も見ます。 また、排泄物や汚れなども重要なヒントになるのでトイレもよく確認します。 最後に、猫ちゃんが落ち着いていれば、声をかけ、そっと撫で、聴診器を当てます。 これだけでは情報として十分ではないかもしれません。 検査や注射などできないことも多々あります。 しかしここで無理やり何かしようと追い回してしまうと余計に恐怖心を与えかねません。 触れなくても、猫ちゃんはちょっとずつヒントをくれています。 その僅かなヒントを見逃さないこと。 そして、飼い主さんの「気づき」を手がかりに対処法を考えていきます。 常日頃から観察をすることがとっても大事ですね。 このように基本的には無理のない範囲で診察を進めていきますが、患部から出血しているなどどうしてもその子に何かをしないといけない場合もあります。 その場合は、飼い主さんの了承を得て鎮静剤を使用することもあります。 通院が難しい保護猫ちゃんたちですが、そんな時はぜひ往診専門動物病院をご活用ください。 お写真は、先日お伺いした保護猫のリリちゃん。 保護する前はこちら。↓ 今と表情が違いますね。 いつか、なでなでさせてくれるようになるといいなぁ。
慢性腎不全の自宅管理で、定期的に伺っている猫ちゃんのおうちからご連絡。 「先生、下痢です、ぴゅーって水下痢が続いています…泣」 慢性腎不全の猫ちゃんは、どちらかというと便秘傾向になります。 いち時的なものだといいなと思いつつ、初日は便検査と対症療法を実施しました。 …良くなりません。 「腎不全の他にも病気を発症してしまったのですかね…下痢が続くなら、血液検査と超音波検査をしましょうね。そういえば、いままでも何度か軟便の時ありましたよね?」 と問いかけると、 「そうです、うんちを緩くする薬を飲んだ時だと思うのですが…」 と言いながら、猫ちゃんの管理ノートを出してきてくれました。 腎不全で食べムラのある猫ちゃんなので、飼い主様が投薬記録と一緒に毎日、その子が口にしたものをメモしている素敵なノートです。 振り返ってみてみると、軟便の日のおやつの欄には“カニカマ”の文字が。 ここ数日はドライフードを食べてくれず、“カニカマ”が食事のメインになっていました。 「…もしかするとカニカマが原因??」 病院と検査が大の苦手な猫ちゃんなので、まずは“カニカマ禁止”から始めてみることになりました。 すると、驚くほど見事に下痢が止まりました!! 飼い主様の素敵ノートがなければ、そしてそれを一緒に開いて経過を追う、往診ならではの飼い主様と獣医師の距離の近さがなければ、きっと検査・検査でなかなか下痢は解決しなかったと思います。 一般の動物病院ほど機器設備は揃っていないですが、往診専門病院ならではの強みもあります。 大事なペットのために、記録をとっている飼い主様はたくさんいますよね。それはとても大切な、その子の蓄積データです。ぜひ見せてくださいね! ※今回ご紹介した猫ちゃんは、カニカマ(ペット用)が体に合いませんでしたが、大丈夫な子もたくさんいます。猫ちゃんの体調をみながら与えることに問題はありません。
痒みの原因は、犬小屋にあり!? 都心部ではマンションなどの集合住宅でも飼いやすい小型犬や猫が人気ですが、郊外では敷地を広く活用できるため、のびのび外飼いのわんちゃんも多いです。 先日、こんな相談がありました。 2週間程前から急激に皮膚炎が進行し、全身掻き壊してひどい状態。外飼いの犬なので野生のタヌキから何かうつったかもしれない。 とのこと。 タヌキ、皮膚炎、でまず最初にピンと来るのは疥癬症(かいせんしょう)です。 疥癬症とは、ヒゼンダニというダニの感染が原因で起こる皮膚炎です。 往診に伺い玄関先に車を停めると、さっそく庭先で吠えてお出迎え。 番犬としてしっかりお仕事してますねー。 そのわんちゃんは、遠目でもわかるほど脱毛が進行し、特に大腿部と四肢でひどい様子でした。時々後ろ足で体を掻きむしっています。 うーん、これはかなり痒そうだ。 痒みを伴う皮膚炎を起こす病気はいくつかあるのですが、タヌキが犬小屋に入り込んでいたのを見たという稟告と症状の経過から、今回は疥癬症を疑って駆虫薬を処方しました。 結果、皮膚炎は2週間ほどで良くなり、1ヶ月後には毛も生えて見違えるほどになりました! しかし原因となるダニとの接触を避けなければ再感染し症状を繰り返す可能性があります。 わんちゃんが普段過ごしている小屋には囲いがありませんでしたので、野生動物の侵入を防止するため柵や網を張っていただくようアドバイスいたしました。 次回お伺いすると、DIYされていました! これでタヌキさんが入り込むことはないでしょう。 また、外飼いでは虫に刺されやすかったり、ネズミなどの小動物が侵入する可能性もありますので、フィラリア症の予防、ノミやダニの予防、ワクチン接種なども継続して行っていただくといいですね。 往診での診察は、ご家庭でのペットの飼育環境を見てお話しできるところも魅力のひとつです。 今回のような外飼いのわんちゃんだけでなく、トイレのしつけについての相談ができたり、介護をしている子や多頭飼いの子たちの住環境についてもご相談いただけます。 特に猫ちゃんの場合は尿路系疾患が多く、トイレの大きさや設置場所、水のみ場の状況も重要なポイントになります。トイレの設置数を増やしたら、なかなか治らなかった膀胱炎がおさまった、なんてことも。 このように往診獣医師は病気の治療だけでなく、生活環境を見直し、健康維持にお役に立てるようなアドバイスも行っております。 うちの子のおうちも見てもらいたい!と思った際は、お気軽に往診専門動物病院へご相談ください。
大型犬のトイレ問題 寝たきりになったらどうしよう!? それは、14歳のスタンダードプードルの飼い主さんからのお電話でした。 なんと3日間おしっこが出ていない、とのこと。 えええ、、3日間もおしっこ出ないの?ほんとうに?? 驚きながらも経過を詳しく聞くと、数日前から急な眼球振盪とふらつきで立つことができず、寝たきりになってしまったそうです。 体重が24kgあり、飼い主さん(女性)が抱えて車に乗せられず、通院が困難に。 近所のかかりつけ動物病院でお話だけしたら、おそらく特発性前庭疾患だろうということ。 激しい嘔吐でごはんもお水も摂取できていないため、点滴剤と注射セットをもらって、発症からの3日間は自宅で皮下補液をしている。ということでした。 ところが3日目になっても、おしっこが出ない! かかりつけでは往診をやっておらず、インターネットで往診動物病院を探して、こちらへ電話をしたのだそうです。 膀胱におしっこが溜まっているかどうか、診てほしい。 おしっこが溜まっているなら圧迫やカテーテルで出してほしい、とのご依頼でした。 緊急性が高いと判断し、お電話の後すぐに往診へ。 診察をしてみると、膀胱はパンパンになって硬く張っていました! これは、かなりつらそうだ、、、。 この子は普段の排尿はお外でしているとのこと。 どうやら自力で立ち上がれないこともあって、トイレを我慢してしまっていたようです。 これ、けっこう大型犬あるあるなんです。 普段、お散歩中に外で排泄している子は、外に出るまでずっとおしっこを我慢してしまうんですよね。 けれども具合が悪くて立てない大型犬を、外に連れて行くのは至難の業です。 もし入院中であれば、尿道カテーテルを設置してしまうところです。 このスタンダードプードルさんも、カテーテルを通して尿を抜いてあげることにしました。 (硬くパンパンに張った膀胱に対して圧迫排尿をすると、膀胱に過度な圧力がかかり破裂してしまうことがありますので注意が必要です。) カテーテルを入れるとすぐに尿が出てきました。 何度もシリンジで引いて、どんどん抜いていきます。 抜いても抜いてもなかなか空になりません。 ペットシーツがどんどん重たくなっていき、、、 なんと、700cc近く、抜けました!! 1日に250cc点滴をしていたので、摂取した水分くらいは尿が溜まっていたようです。 抜去後は、下腹部がすっきりペタンコになっていて こんなに溜まってたんだね!と飼い主さんも驚いていました。 今回、おしっこが出ない原因は単に我慢していただけ、ということになりますが、我慢しすぎると腎臓に負担がかかってしまいます。 また、尿道結石が詰まって尿が出ない場合(尿道閉塞)、早急におしっこが出るように詰まりを解除してあげなければ命に関わります。 そのほか、尿が作られていなくて出ていない、ということであれば急性腎不全の可能性もありこちらもすぐに治療が必要です。 このスタンダードプードルちゃんは、その後も自然に出せるようになるまで毎日カテーテルで尿を抜くことになりましたが、現在は前庭疾患の症状もおさまり問題なく排尿できています。 後日の血液検査で腎臓に異常がないことも確認できましたので、ほっとひと安心でした。 1日以上おしっこが出ていない、という場合は、すぐに治療を受けるようにしましょう。 通院が難しい場合は、迷わず往診専門動物病院へご相談ください!