すっかり秋も深まり、朝晩の冷え込みも厳しくなってまいりました。 猫ちゃんは寒くなると水をあまり飲まなくなってしまいます。 飲水量が減ると尿路結石や膀胱炎などの泌尿器系疾患を引き起こしやすくなりますので注意が必要です。 トイレの回数が増えた、トイレに座っている時間が長い、血尿などといった症状がある場合には、早めに尿検査を受けるようにしましょう。 ここで問題になるのが「どうやって採尿するのか?」です。 尿検査には不純物が混じっていない液体状態の尿が必要です。 量は5mlほどもあれば検査が可能です。 わんちゃんの採尿は比較的簡単なのですが、猫ちゃんは少し工夫が必要です。 方法①トイレ砂の上に裏返したペットシーツを敷いておき、砂に吸収されないようにする しかしこの方法ではシーツを気にした猫ちゃんが砂をかき混ぜてしまいうまくいかないことも多いです。 方法②おたまで取る おしっこをしているときに、後ろからそっとおたまを差し入れておたまに直接尿を受けます。 採れた尿はスポイトで吸って密閉できる容器に入れます。 お弁当用に売られているプラスチック製の醤油差しが便利です。 方法③採尿用スポンジを使う ウロキャッチャーといって棒の先のスポンジ部分に尿を染み込ませて使います。 おたまと同様に排尿時にそっと後ろから尿を受けます。 染み込ませたらチャック袋などに入れて乾かないようにします。 方法④システムトイレを使う システムトイレは、チップの下がすのこ状になっていて、チップを通り抜けた尿は最下部のペットシーツに染み込むようになっています。 ペットシーツを敷かないでおけば、簡単に液体のままの尿が採取できます。 採取した尿は時間が経つと酸化したり菌が繁殖したりして検査結果に影響が出てしまいます。 診察の直前に採尿できるのが理想ですが、密閉容器で冷蔵保存しておけば半日程度は検査可能です。 往診でも尿検査は可能ですが、事前に採尿をしておくと診察がスムーズです。 いざ採尿という時に困らないよう、どの方法が猫ちゃんに合っているか試しておくといいでしょう。
人馴れしていない保護猫ちゃんの診察ってどうしてますか? 念願叶ってついに保護猫ちゃんをおうちに迎えることができ、この子を絶対幸せにするぞ!と心に誓って数ヶ月。 ようやく家に慣れてきてくれたころ、なんだか様子がいつもと違う?もしかして具合悪いのかな? まだ完全に心を許してくれた訳ではないのに、抱っこや触ることも難しいのに、どうやって動物病院へ行くか悩みますよね。 そんなときはやはり往診が便利ですね。 便利ですが、当然獣医師のことなんてもっと信用していない訳で(動物好きなのに嫌われる運命・・・泣) 簡単には診せてくれませんので、慎重に行わないといけません。 とにかく嫌がることはしない、ストレスを与えない!これが鉄則です。 依頼を受けたらまず、保護猫ちゃんの飼育歴や家での過ごし方を詳しく確認します。 保護された時の状況や時期は?どのくらい慣れてきたのか? 普段からケージに入っているのか?お部屋は猫ちゃん専用のお部屋なのか? 1番困るのは、ご自宅へお伺いしても、廊下や家具の間に隠れてしまって、姿さえ見えないこと。 なので、見えないところに隠れてしまう子は、獣医師が来る前に診察できそうな場所に移動してもらいます。 家全体の行き来を自由にしている場合は、入ってくれるケージがあればそこで待機。 ケージに入ってくれない場合は、できるだけ物がなく狭めのお部屋に移動してもらいます。 扉で仕切れる廊下スペースや洗面所を片付けて、そこで診察させてもらうこともあります。 もし移動させる事が難しいようならば、無理せず普段の様子をそのまま診させてもらいます。 診察の際は、飼い主さんのお話を伺いつつ、少し距離を取ってそっと様子を観察します。 いきなり触ろうとすることは絶対ありません。 様子を観察するだけでもわかることは色々あります。 体格や被毛の艶などから栄養状態はどうか。 呼吸のし方や歩き方におかしなところはないか。 皮膚炎がないか、目ヤニやヨダレなど汚れているところはないか。 こちらの動きに対する目や耳の反応はどうか。 シャーっと言って口を開けてくれたら、粘膜の色も見ます。 また、排泄物や汚れなども重要なヒントになるのでトイレもよく確認します。 最後に、猫ちゃんが落ち着いていれば、声をかけ、そっと撫で、聴診器を当てます。 これだけでは情報として十分ではないかもしれません。 検査や注射などできないことも多々あります。 しかしここで無理やり何かしようと追い回してしまうと余計に恐怖心を与えかねません。 触れなくても、猫ちゃんはちょっとずつヒントをくれています。 その僅かなヒントを見逃さないこと。 そして、飼い主さんの「気づき」を手がかりに対処法を考えていきます。 常日頃から観察をすることがとっても大事ですね。 このように基本的には無理のない範囲で診察を進めていきますが、患部から出血しているなどどうしてもその子に何かをしないといけない場合もあります。 その場合は、飼い主さんの了承を得て鎮静剤を使用することもあります。 通院が難しい保護猫ちゃんたちですが、そんな時はぜひ往診専門動物病院をご活用ください。 お写真は、先日お伺いした保護猫のリリちゃん。 保護する前はこちら。↓ 今と表情が違いますね。 いつか、なでなでさせてくれるようになるといいなぁ。
慢性腎不全の自宅管理で、定期的に伺っている猫ちゃんのおうちからご連絡。 「先生、下痢です、ぴゅーって水下痢が続いています…泣」 慢性腎不全の猫ちゃんは、どちらかというと便秘傾向になります。 いち時的なものだといいなと思いつつ、初日は便検査と対症療法を実施しました。 …良くなりません。 「腎不全の他にも病気を発症してしまったのですかね…下痢が続くなら、血液検査と超音波検査をしましょうね。そういえば、いままでも何度か軟便の時ありましたよね?」 と問いかけると、 「そうです、うんちを緩くする薬を飲んだ時だと思うのですが…」 と言いながら、猫ちゃんの管理ノートを出してきてくれました。 腎不全で食べムラのある猫ちゃんなので、飼い主様が投薬記録と一緒に毎日、その子が口にしたものをメモしている素敵なノートです。 振り返ってみてみると、軟便の日のおやつの欄には“カニカマ”の文字が。 ここ数日はドライフードを食べてくれず、“カニカマ”が食事のメインになっていました。 「…もしかするとカニカマが原因??」 病院と検査が大の苦手な猫ちゃんなので、まずは“カニカマ禁止”から始めてみることになりました。 すると、驚くほど見事に下痢が止まりました!! 飼い主様の素敵ノートがなければ、そしてそれを一緒に開いて経過を追う、往診ならではの飼い主様と獣医師の距離の近さがなければ、きっと検査・検査でなかなか下痢は解決しなかったと思います。 一般の動物病院ほど機器設備は揃っていないですが、往診専門病院ならではの強みもあります。 大事なペットのために、記録をとっている飼い主様はたくさんいますよね。それはとても大切な、その子の蓄積データです。ぜひ見せてくださいね! ※今回ご紹介した猫ちゃんは、カニカマ(ペット用)が体に合いませんでしたが、大丈夫な子もたくさんいます。猫ちゃんの体調をみながら与えることに問題はありません。
往診で良く聞く単語! 「うちの猫、キャリーに入れられなくて、通院ができないんです…」 通院できないなら、往診という選択肢があるから、普段は入れなくてもOKです! でもこのご時世、いつ災害に直面するかはわかりません… どうしてもキャリーバックに入ってもらおうと格闘するときがくるかもしれません。 猫ちゃんのキャリーバック慣れは、できます! しつけが難しいと言われる猫ちゃんですが、実はちゃんと覚えてくれます。 キャリーの中は嬉しいことがある、と根気強く教えてあげてください。 ・キャリーの中に毎日1回、特別におやつを置いておく ・キャリーの中でごはんをあげる ・キャリーの中にお気に入りのベッドを入れておく 突然、がしゃん!とキャリーの扉を閉めると、怖い気持ちが生まれると思うので、まずは自由に出入りできる場所・嬉しいことがある場所という状態を保ってみてください。 ブログの写真は、キャリー大嫌いな兄弟が、ちょっとづつ頭を入れられるようになってきたものです🐱