執筆者:はる動物診療所 院長 櫻井 崇史
往診では立つことが難しい子の診察を依頼されることはよくあります。
寝たきりに近い状態になったときに、気になってくるのが床ずれ(褥瘡)の問題です。体重の減少・筋力の低下から骨ばったところに力がかかり続けると、血流が悪くなり壊死してしまいます。ワンちゃんにとっても飼い主様にとっても毎日の生活の質が著しく下がる疾患なので、知識として頭の片隅に入れておきましょう。
●どんな症状?
皮膚が赤くなっている、触っているときに被毛が湿っている等で気が付いて連絡いただくことが多いです。犬猫の床ずれは、被毛が固まりカサブタのようにみえますが、壊死してしまった部分は、皮膚を取り除くと筋肉や骨が露出しています。また、細菌の感染がある場合、押すとクリーム色っぽい膿が出てくることもあります。お尻や肩、手首、頬のあたりのように痩せたときに骨が触れる場所にできやすいです。

●床ずれになってしまったら
床ずれのようなものを見つけたら、できるだけ早く獣医師に相談してください。自宅にあった軟膏等を被毛の上から塗っている方も散見されますが、壊死してしまった皮膚を取り除き清潔な状態にしてからでなければ、良化はしていきません。必ず最初に獣医師の処置と、今後の指示は受けるようにしましょう。
●予防・結論
床ずれは表層だけの浅いものでも治療に一か月、骨の露出しているような深いものの場合、数か月間はかかってしまいます。治療よりも予防の方が遥かに容易なので、起立が難しくなってきたら早めに準備をしていきましょう。
できれば寝たきりになって困る前に相談してみてください。
滑りづらい床材や、通気性の良い耐圧分散マットの選び方など、往診ではご家族の様子や自宅の環境を見ながらお話できると思います。