執筆者:往診専門 リヨン動物病院 獣医師 須田 亜矢子
一年を通して動物達の診察をしていると、病気の流行によって季節の移り変わりを感じる事があります。梅雨から夏にかけての暑い時期に増えるのが、皮膚病や外耳炎の痒みで苦しむわんちゃんや猫ちゃん。反対に、寒くなるにつれて増えるのが、「おしっこが出づらい」「血尿が出た」等、おしっこのトラブルを抱える猫ちゃん達です。
尿道や膀胱で起こる様々な疾患を総称して下部尿路疾患と呼びます。寒い時期に猫ちゃんの下部尿路疾患が増えるのは、暑い時期に比べて飲水量が減る事や、寒さによるストレスや活動性の低下が一因であると言われています。
診断への第一歩
下部尿路疾患を診断するための検査として、問診と身体検査、尿検査、超音波検査などを行いますが、お伺いした先の猫ちゃんがお家の中を逃げ回って捕まらなかったり、攻撃行動が激しくて飼い主さんでさえ触れないなど、思うように検査ができないケースも多々あります。尿道閉塞を疑う症状(おしっこが全く出ていない)のように緊急性があると判断した場合は何としてでも捕まえて診察をさせていただきますが、そうでない場合は問診の第一歩として尿検査だけでもさせて下さいとお願いします。
尿沈渣(にょうちんさ:尿を遠心分離して得られる沈殿物)を顕微鏡で観察して、結晶が見つかれば尿石症、細菌が多くいる場合は尿路感染症を疑います。尿比重は飲水量が多いのか少ないのかを判断する手掛かりになりますし、尿試験紙で尿糖が検出されれば糖尿病を疑って精査をおこなうきっかけになります。このように、尿検査から得られる情報は意外とたくさんあるのです。

採尿方法
尿検査をする為には、おしっこを液体のまま採取する必要があります。ペットシーツに吸収されていたり、猫砂で固まってしまったおしっこでは検査はできません。
採尿方法としては、猫ちゃんがおしっこをしようとした瞬間にお玉でキャッチする方法や、採尿する日だけトイレの猫砂を入れないでおく方法などがありますが、神経質な猫ちゃんにはいずれも難しいかもしれません。
システムトイレ(上段に猫砂やチップ、下段に吸水シートを入れる2層式のトイレ)を用いると、下段の吸水シートを抜いておくだけで猫ちゃんに違和感を感じさせずにおしっこを回収する事が出来るのでおすすめです。

定期的な検査で症状の予防を!
下部尿路疾患はどんな年齢、品種、性別の猫ちゃんでも患う可能性のある病気ですが、定期的な検査で状態を知る事により、症状が出る前に適切な対策をとる事ができます。
体調管理を万全にして、寒い冬を乗り切りましょう。