執筆者:るい動物病院 院長 山口 真紀子
往診医療を始めて感じたことは、
『実は飼い主さんは、獣医師に聞きたいことがたくさんある』ということです。
施設で診察台を挟んで話をするときは、基本的にはその『病気』についての話になります。
初診であれば今の体調がどうなのか、再診であれば治療の経過が良いのか悪いのか。
下痢で通院すれば、聞くことはお腹の調子のことだけ。
皮膚で通院すれは、聞くことは皮膚のトラブルのことだけ。
寝たきりでがで床ずれができた場合、床ずれの治療のことだけ。
動物病院は、次に待たれている方が待合室にいることもあり、あまりいろいろなことを聞けない、というのが飼い主様の本音のようです。
往診診療は基本的に獣医師一人で診察から会計まで行いますので、飼い主様と接する時間や対話の時間が長くなります。
『先生、ちょっと聞いていいですか・・・?』という一言から始まり、
下痢であれば、
『このフードを与えているが、それでいいのか』
『おやつはどのくらいあげていいのか』
『今度、再発しないために気をつけることはないのか』
皮膚病であれば、
『シャンプーはどのくらいすればいいのか』
『食事で気をつけることはないのか』
『実はこのサプリメントを与えいるが大丈夫なのか』
寝たきり介護であれば、
『ベッドはこの素材でいいのか』
『体位は何時間おきに変えればいいのか』
『過ごす場所はリビングのこの位置でいいのか』
『部屋の温度はどのくらいが適切なのか』
『起こすときにどのように介助すればいいのか』
話し出すと、堰を切ったように聞きたいことがあふれ出す飼い主様もいらっしゃいます。
飼い主様は、体調を崩してしまった我が子についてや日頃の健康管理について、実は沢山の不安を抱えているのだなと感じます。
ほんの些細な事・わざわざ獣医師に聞くのは申し訳ないかなと思われることが、実はそのペットの健康維持や、病気の家庭での管理や付き合い方において、とても大切な情報であると感じることもしばしばです。
往診診療は診察台の上で行う診療と違い、ペットに緊張感がないため、『ふだんの素の表情や行動』を見ることができますので、きめの細かいアドバイスが可能かなと思います。
往診を呼ぶということを、少しハードルの高いことだと感じずに、お困りごとがあれば、もっと気軽にお声掛けいただければ嬉しいです。