執筆者:さくらアニマルクリニック 院長 柿崎 舞
犬の寿命が延びて高齢化がすすむとともに、認知症も増えています。
犬の認知症は10歳頃から見られ始めることが多く、12歳以上で発症率は急増していくと言われています。
洋犬よりも日本犬や日本犬系のミックスが認知症になりやすい傾向にあり、中でも柴犬の認知症のご相談が多いです。

認知症は予防が最も大切ですが、「年をとったから仕方がない」とみなされて、早期に動物病院に相談される方は少なく、発見が遅れがちです。
早期に行動変化のサインを見つけることができれば、加齢に伴う脳の変化と行動の異常をコントロールでき、進行を遅らせて飼主様と犬の快適な生活をより長く保つことが可能になります。
● 夜中に意味もなく、単調な声で鳴き出し、止めても鳴き止まない。
● 目的もなくひたすら前に進もうとする、ぐるぐる歩き回る(旋回運動)。
● 狭い所に入りたがり、自分で後退できないで鳴く。
● 呼びかけに反応しない、どこか一点を見つめているなど。
● 今までできていたことができなくなる。トイレの失敗など。
● 良く食べて、下痴もしていないのに、痩せてくる。
このような行動変化のサインが現れている場合、認知症かもしれません。
認知症の症状は多くのケースで徐々に起こり、ゆっくりと進行していきます。しかし高齢犬で何らかの病気が悪化し、回復した後で急に症状が出現することもあります。

飼い主様自身は愛犬が認知症だと診断されると、ショックを受けられると思いますが、症状に応じて必要な対処をすることで、認知症を上手にコントロールすることができます。
認知症の犬においての終わりの見えない介護生活は、身体的精神的に大きな負担となることが多いと思います。
特に夜鳴きは、家族の生活に非常に大きな負担をかけ、途方に暮れます。
往診では生活環境を見せていただき、飼い主様のご希望をお聞きして、治療や介護のアドバイスができることが多いですのでお困りの飼い主様は一度ご相談ください。
またこれから愛犬がシニア期を迎える飼い主様は、適度に刺激のある生活を心がけ、食事内容の見直しやサプリメントを取り入れるなど認知機能の健康を維持するための積極的なケアをぜひご検討ください。