執筆者:イース往診どうぶつ診療所 院長 木口 久幸 休み明けのある日、連日明け方3~4時まで働いた疲労の名残を腹にためながら、入院処置室の扉を開けると、点滴されている白猫が嘔吐しているのに出会わしました。それは獣医にとってはよくある場面なのですが、黄色っぽい吐物の中に見覚えのある物があります。 アセビ(馬酔木)の花です。知らない人には花に見えないような花ですが、「馬酔木」の字の通り、馬をも倒すほどの猛毒です。2~4月に白や薄いピンクの花を咲かせ、スズランに似ていて、公園や街路樹として見かけます。 その猫が吐いたのは花がら1つでしたが、それだけでも1頭の猫を瀕死の状態に追い込むのに充分だったのかもしれません。飼い主様にお聞きしたところ、かわいい鉢植えだからと誕生日に友人から贈られたそうです。幸い、その猫は回復し事なきを得ましたが、もし亡くなっていたら、そのご友人もどうしてよいか分からないぐらい不幸なことになっていたかもしれません。 私は少し歳をとってから大学に入り直し、獣医になりましたが、その前は小さな花屋をやっていました。場所も時代も違いますが、花屋さんで自分の扱っている花が、動物たちにどんな害を与えるか、知識を持っている方は皆無に近いでしょう。 獣医でも動物に毒性を持つ花の全てを知っている人は少ないかもしれません。今はスマホ1つで、大概のことは調べられます。(埼玉県上尾市の井上動物病院のHPにある「ペットに危険な植物」はお勧めですよ) これからの季節、クリスマスシーズンになれば街も華やかになり、ポインセチア、シクラメンなど窓辺に飾ると素敵ですね。でも、その花大丈夫?お気を付けください。
執筆者:まりこ動物往診所 院長 竹野 まりこ 膀胱炎には細菌性や特発性のものがあります。膀胱炎は、全年齢で起こりうる病気です。症状としては、頻尿、血尿、排尿困難、排尿痛、トイレ以外での排泄、二次的におこる尿道閉塞などが見られます。細菌性膀胱炎は、通常無菌的な膀胱内へ細菌が逆行感染することでおこります。尿道が長いオスよりもメスがなりやすい傾向にあり、犬では尿路感染症が主に関係し、猫では糖尿病や副腎皮質機能亢進症、慢性腎臓病、Felv/FIVなど基礎疾患がある場合もあるため、膀胱炎を疑う際には、検診など定期的に受診し他の病気がないかも見てあげましょう。 また特発性膀胱炎は、一般的に猫にはもっとも多いといわれており、その原因は動物を取り巻く環境的な要素が大きく、ストレスの強い生活をすることで発症します。特に飲水量が少なくなるようなドライフードのみの食生活や、飲水量が減少する季節の変わり目、トイレが清潔でない(気に入らない)、排尿を我慢させてしまう環境、肥満や神経質な性格なども要因としてあげられます。最近では飼育環境によるストレスや、食生活が原因のヤギの膀胱炎や尿石症(ひどい場合、尿閉になることも)も往診時によく見かけます。 これから寒くなる季節ですので、十分な飲水量の確保や、ストレスの少ない環境づくりなど、今一度振り返ってみてあげてください。往診では、ご自宅の飼育環境やいつもの動物たちを直に飼い主様と同じ目線で獣医師が共有できるので、一緒に考え問題解決に取組めます。お気軽にご相談ください。 また、年1~2回の定期的な健康診断(尿検査も含めて)は、症状が出る前の健康な個々の身体の状態(基準)を知ることでその子の病気の早期発見にも役立ちます。ぜひ、定期的な検診受診をお勧めします。
執筆者:メープルファミリー動物病院 院長 朝井 鈴佳 皮膚病に悩まされている犬猫が多い昨今、「皮膚病も往診頼めますか?」とお問合わせをいただくことがあります。緊急でも重病でもないのに往診頼んでいいのかな?と言うことなのですが、答えは「イエス!」です。 これまでに往診で出会った皮膚病の犬猫の中には、車に乗るだけで下痢や嘔吐する子、動物病院だと震えが止まらない子、車に乗せるのも大変な超大型犬や高齢の子たちがいます。またお子さんが小さくて動物病院に行く時間がない飼い主様や、運転免許証を返納されて動物病院に行く手段がない飼い主様など、往診ご依頼の理由は様々です。でも、そのような明確な理由がなくても皮膚病の往診はしています。 皮膚患部の診察をしながら、ご自宅でたくさんのお話をしていると、環境や食べ物などの見直しのヒントも出てきます。その結果、皮膚症状の良化だけでなく体質改善にもつながり、徐々に犬猫が元気になってくることもよくあります。また先日ご依頼があったのは、急に皮膚が真っ赤になった子の往診です。実はホットカーペットによる低温やけどだったのですが、その場で原因がわかり早急な対応ができたので、大事には至りませんでした。(低温やけどは命に関わるケースもありますので、皆様くれぐれもお気を付けください。) ご依頼を受けても日程や場所、犬猫の性格などを総合的に考慮した結果、心苦しくもお断りする場合もあります。でも往診のハードルはそんなに高くありません。「往診してもらえるかな?」と迷ったら、まずは気軽に問い合わせていただくことがとても大切だと思います。
執筆者:往診専門 森のくま動物病院 院長 大熊 慶子 「呼吸が苦しい」犬猫は、往診にはとても多い症例です。息が苦しい動物がカゴに入れられ、乗り物に乗って、待合で待って、知らない診察室で知らない人に囲まれるのは大変なこと。 ある高齢のチワワは、僧帽弁閉鎖不全症で肺水腫になり、行きつけの病院で「もうできることはない」と言われたそうです。最大量の心臓のお薬をもらっていました。肺水腫の治療は水を落とすこと。ここから先は、多量の利尿剤を注射して肺の水がなくなるようにするという治療になりますが、心臓はラクになっても脱水が腎臓に負担をかけるので、血液検査と入院治療が必要になります。 入院中に死亡することもあるので、 もう治療をしないでおうちに帰る判断も妥当でした。 一か八か、おうちの酸素室で飼い主さんに利尿剤を飲ませてもらい、 呼吸の苦しさの指標である、寝ている時の呼吸数をLINEで知らせてもらいお薬を増減しました。すると夜も眠れない苦しさだったのが、肺水腫から離脱することができたのです。腎臓の数値も問題ありませんでした。 これはとてもうれしいことでした。ご自宅にも酸素室は設置でき、 往診にもエコーと血液検査機器はあり、そして何より飼い主さんが大変優秀な動物看護士さんであった ことから、リモートで動物病院に入院しているような治療ができるのです。 心臓病、腫瘍、甲状腺の病気などで、胸水のたまる猫の治療も多く行っています。内科疾患の末期は良くなることばかりではありませんが、おうちで飼い主さんと二人三脚で、動物のために一番よいと思われる次の一手を打っていく、往診治療に大変やりがいを感じています。
2023.12月より飼い主様に寄り添う往診獣医師協会の情報誌「Cerca」を発刊いたしました。つきましては、配布・設置にご協力いただける企業・団体・施設様を募集いたします。要項は以下のとおりとなります。 ●発刊の目的動物病院に行けないどうぶつと飼い主様にとって、「往診」という選択を常識に。というミッションを実現するために、当協会について広く知っていただくため。また飼い主様に有益な情報を提供し、何歳になってもペットと共に暮らせる社会の実現と終生飼育をサポートするため。 ●仕様B5サイズ、全8ページ。本創刊号が12月、以降3カ月ごとに発刊いたします。 ●掲載内容協会獣医師によるコラム 5本プレゼントキャンペーンご賛同企業様の広告など ●応募方法本ホームページのお問合せフォームより、ご協力いただける部数(50部単位)と、ご予定いただいている配布・設置先名をお送りください。担当者より追ってご連絡させていただきます。
当協会は往診獣医師の輪をさらに拡げるべく、来る2024年2月4日(日)に懇親会を開催します。 すでに往診開業している先生の他、開業はしていないが往診に興味をお持ちの先生方も多数参加予定です。 非会員の獣医師、企業様におかれましては、下記フォームよりお申し込みください。 ぜひ、お気軽にお誘い合わせの上、ご参加いただきますようお願い致します。 【概要】日時 2024年2月4日(日) 15時〜17時場所 小田急ホテルセンチュリーサザンタワー 〒151-8583 東京都渋谷区代々木2-2-1 【参加費】〈獣医師〉A会員 5,000円B会員 8,000円非会員 10,000円〈企業様〉賛助会員 30,000円/人その他 50,000円/人 支払い方法:申し込みフォーム記入後、振込口座を事務局よりご連絡致します。 申し込み期日:1月20日まで 支払い期日:1月30日まで キャンセルに関して:2月1日まで可能、振り込み手数料を除いた金額を返金致します。以降のキャンセルにつきましては会費のご負担をお願いします。 【申し込みフォームはこちら】https://docs.google.com/forms/d/1fwFUhx7C9RVZfYon2AmRVixdBZuBlgEst9aOCpT-_6w/edit 尚、ご不明な点やご質問がございましたら協会事務局contact@jhvca.orgまでご連絡ください。 往診獣医師協会 事務局
往診の獣医師たちが集まる協会「一般社団法人 往診獣医師協会」では、年に4回、フリーペーパーを発行することにいたしました。獣医師協会なんて堅苦しいイメージがあるかもしれません。私たちは、一般的な動物病院を飛び出して、「往診」としてご自宅で診察をすることが大切だと思う獣医師です。 ●なぜご自宅での診察が大切なのか?往診というと、寝たきりのシニアの子や動物病院が嫌いな子、通院が難しいような高齢の飼い主様が利用するイメージが強いかもしれません。でも、動物病院では緊張してしまって普段の様子を見せてくれない子も、実はご自宅で診察することで普段の様子を観察することができます。いつもいるお部屋の様子から、ちょっとした生活のアドバイスをすることができるのも往診ならではだと思います。 ●往診はどうやってお願いするの?何か準備は必要?往診で診察を希望する場合、協会ホームページからご自宅近くの往診専門動物病院を検索してみましょう。そこから各先生の病院ホームページに飛ぶことができます。 まずは電話やメールなどで気になる症状などを問い合わせてみてください。ほとんどの先生が車で診察に伺っています。車を停められるスペースをお知らせください。ご自宅では動物さんと飼い主様、獣医師がいられるスペースがあればどこでも診察が可能です。問い合わせの際に診察場所についても相談してみてくださいね。 ●往診専門獣医師の思い往診専門獣医師は、動物たちが何歳になっても、飼い主様が何歳になっても、きちんとした獣医療を提供し、最期の時が来るまで穏やかに過ごせるサポートをしたいと考えています。時には往診だけではサポートできず、近隣の動物病院へ協力をお願いすることもあるかもしれませんが、 飼い主様が不安な気持ちになる時はゆっくりとお話を聞いて可能な限りアドバイスさせていただきます。おうちの子の幸せを叶えるために、飼い主様と一緒に往診獣医師が寄り添うことができたら幸せです。
12/5(火) 21時半〜 オンライン交流会を開催いたします。 往診獣医師協会では、年に2回会員の先生方の交流会を行っています。 すでに往診開業されている先生は診療のやり方の相談。 これから往診開業される先生は診察のやり方や開業の仕方などの相談。 賛助企業様からの往診に役立つ情報提供の時間もあります。 いつも約2時間の交流会時間はあっという間に過ぎてしまいます。 会員数もどんどん増えてきましたので交流会は5〜6人のグループに分かれて行っています。 大人数だと聞きたいことが聞けない、、、という心配もなくお話いただけると思います。 会員の先生にはすでにメールにて参加可否のアンケートをお送りしておりますのでお答えください。 まだ会員ではない先生、往診に興味のある先生は、協会HP会員登録からお願いします。 当協会では往診診療を行う獣医師が増え、「病院に連れて行けない子」達にも獣医療が届けられるよう願っています。
往診獣医師協会 会員獣医師各位 当協会の賛助会員企業様からご提供いただいておりますサービスについて、改めてご紹介します。 【テルコム株式会社様より】 酸素発生機無料レンタルを提供いただいています。 こちらは往診獣医師へ酸素発生機を一台無料で貸与していただけるサービスです。 急に酸素が必要になったときでも往診車に酸素発生機を乗せておけば安心。飼主様が酸素発生機をレンタルするまでの間、獣医師が飼主様へ一時的に貸し出すことができます。 【共立製薬様より】 往診獣医師協会の働きかけにより、獣医師からの希望が多かったロイヤルカナン「Dライン」について、一定の条件を満たせば往診のみで開業している獣医師でも購入が可能となりました。 【株式会社QIX様より】 事業者賠償補償『protect+』という往診獣医師向けの保険が販売開始されました。 往診先で診療中に動物が暴れて飼主様に怪我を負わせてしまった、飼主様の私物や家財道具を壊してしまった、などの「往診獣医師のもしも」に備えられる保険です。 詳細は、当HPトップの賛助会員様リンクより各企業へ直接お問い合わせください。 今後も日々の診療業務に役立つ情報発信やイベント開催を予定していますので、どうぞ宜しくお願い致します。 往診獣医師協会
今回は、外傷性後肢麻痺のわんちゃんの車いす製作をお手伝いしましたのでご紹介します! この子は事故により両方の後脚が麻痺してしまい、自力で歩けなくなってしまいました。 飼い主さんは、車いすについて教えてほしい、リハビリをお願いしたい、ということで往診での診察を依頼されました。 最初にご自宅に訪問したときは事故から1ヶ月が経とうとしているところでした。 医療センターでの集中治療を受け、幸い一命は取り留めたものの、食欲や元気がなく、、。 お散歩が大好きだったというこの子は、突然自分の体が思うように動かせなくなってしまい戸惑っている様子。とても不安げな顔をしていたのが印象的な子でした。 この子にもう一度歩けるようになってほしい、とにかく元気になってほしいというのが飼い主さんのお願いでした。 車椅子を製作している工房さんをご紹介し、後日、みんなで一緒に採寸をしました。 初めは進み方がわからず戸惑っている様子でしたが、1週間もすれば自分で行きたい方向に進めるようになりました!とのこと。 少しずつ外へ出るようになり、表情も明るくなった気がしますね。 すっかり食欲も戻り、今はリハビリや漢方治療などを頑張ってくれています!
往診獣医師協会の獣医師が、Sippo Festa 2023 に参加します! https://sippofesta.com/ ----- 開催日時:2023年6月24日(土)10:00-17:30、25日(日)10:00-17:00 会場:国営昭和記念公園みどりの文化ゾーンゆめひろば ----- 往診獣医師協会の獣医師によるわんちゃん健康相談会を行います。 開催場所:わんちゃん健康相談会ブース時間:終日相談料:無料予約不要(混雑している場合はお待ちいただく場合がございます) ----- わんちゃんのことで疑問やお悩みのある方、お気軽にお越しください✨ 往診ってどんな感じなのだろう…と興味はあるけどなかなか踏み出せない方も、 実際に往診の先生に会って、気になることを聞いたり雰囲気を感じてくださいね🍀 みなさんにお会いできるのを楽しみにしています!!
【お知らせ】オンライン交流会の開催のご案内 獣医師の皆様へお知らせです! 往診獣医師協会は、全国へ広がる会員の先生方へ交流の場を提供するため、オンライン交流会を開催いたします。 これから往診開業を考えている先生方も、当協会のB会員に入会いただけますと交流会に参加できます。 この機会に往診開業をしている先生からリアルなお話を聞いてみませんか? 【開催概要】 日程:6月6日(火曜日) 時間:午後21時30分〜午後22時40分(予定) プラットフォーム:Zoom(参加用リンクは後日お知らせします) このオンライン交流会は会員獣医師の8割ほどが参加予定で、日頃の診療についての疑問について情報交換をする絶好の機会です。 また、賛助会員企業様をお招きし、短い時間ではありますが新しいお薬やサービスについてのPRも予定しています。往診に役立つ新たな情報を得ることができるでしょう。 ぜひご参加ください! 申し込み方法: 入会のご案内からお申し込みください。 オンライン交流会に参加をご希望の方は5月末日までに入会申込みをお願いいたします。以降の申込みは来期の交流会(12月開催予定)から参加できます。 交流会参加者数には限りはありません。 どうぞよろしくお願いいたします! 往診獣医師協会
前回は採尿の方法についてご紹介しました。尿検査でどんなことがわかるのでしょうか。 尿は、血液を腎臓で濾過し、尿細管を通り、膀胱に貯蓄され、尿道を通って排泄されます。 尿検査は腎臓や膀胱などの泌尿器系だけでなく、さまざまな病気の早期発見に役立ちます。 今回は尿検査でどんなことを調べているのかご紹介します。 1、尿の色調と混濁、臭い 正常な尿は淡黄色〜黄色で透明です。極端に薄い、オレンジ〜赤褐色、濁っている、異臭がするなどは注意です。 2、尿試験紙 潜血、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、たんぱく質、ブドウ糖、PHについて試験紙の色調変化をもとに調べます。尿糖やケトン体が出ていると糖尿病の疑い、潜血やPHの上昇があれば膀胱炎などの可能性を考えます。 3、尿比重の測定 屈折計を用いて尿比重を測定し腎臓の尿濃縮能を確認します。腎機能が低下してくるとおしっこが薄くなってきますので慢性腎臓病の早期発見に役立ちます。 4、顕微鏡による尿沈渣の観察 尿を遠心分離して沈殿したものを顕微鏡で観察します。染色液で染色することもあります。尿結石や結晶、円柱、赤血球や白血球、細菌などの病原体や癌などの細胞が出ていないかを観察します。 尿を調べるだけで体のいろんな情報がわかるのですね。 尿検査は大きな機械が必要ないため、往診でも行うことができます。 しかも尿を提出するだけなのでワンちゃんや猫ちゃんにとって負担がかかりません。 健康診断の一環として尿検査を受けてみてはいかがでしょうか。
以前のブログに書かせていただいた、皮下点滴のセット同様、処方される皮下点滴の針も病院によっていろいろです。 ①ピンクの注射針18G(※数字が小さいほど太い)②緑の注射針21G③緑の翼状針21G わたし個人としては②を処方することが多いけれど、 ①は針が太いので処置時間が短くて済むというメリットもあります。あまり痛がらない子や大型犬で、処置時間を重視するなら①も良いなと思います! 猫などで痩せてきてしまって、注射針だと失敗が増える場合、③がおすすめです!扱いやすいと思います。(←腎不全の猫ちゃんの、80歳のオーナーさんもこれで継続がんばれています✨) もし今、皮下点滴に関する困りごとがあれば、処方してもらう針を替え
すっかり秋も深まり、朝晩の冷え込みも厳しくなってまいりました。 猫ちゃんは寒くなると水をあまり飲まなくなってしまいます。 飲水量が減ると尿路結石や膀胱炎などの泌尿器系疾患を引き起こしやすくなりますので注意が必要です。 トイレの回数が増えた、トイレに座っている時間が長い、血尿などといった症状がある場合には、早めに尿検査を受けるようにしましょう。 ここで問題になるのが「どうやって採尿するのか?」です。 尿検査には不純物が混じっていない液体状態の尿が必要です。 量は5mlほどもあれば検査が可能です。 わんちゃんの採尿は比較的簡単なのですが、猫ちゃんは少し工夫が必要です。 方法①トイレ砂の上に裏返したペットシーツを敷いておき、砂に吸収されないようにする しかしこの方法ではシーツを気にした猫ちゃんが砂をかき混ぜてしまいうまくいかないことも多いです。 方法②おたまで取る おしっこをしているときに、後ろからそっとおたまを差し入れておたまに直接尿を受けます。 採れた尿はスポイトで吸って密閉できる容器に入れます。 お弁当用に売られているプラスチック製の醤油差しが便利です。 方法③採尿用スポンジを使う ウロキャッチャーといって棒の先のスポンジ部分に尿を染み込ませて使います。 おたまと同様に排尿時にそっと後ろから尿を受けます。 染み込ませたらチャック袋などに入れて乾かないようにします。 方法④システムトイレを使う システムトイレは、チップの下がすのこ状になっていて、チップを通り抜けた尿は最下部のペットシーツに染み込むようになっています。 ペットシーツを敷かないでおけば、簡単に液体のままの尿が採取できます。 採取した尿は時間が経つと酸化したり菌が繁殖したりして検査結果に影響が出てしまいます。 診察の直前に採尿できるのが理想ですが、密閉容器で冷蔵保存しておけば半日程度は検査可能です。 往診でも尿検査は可能ですが、事前に採尿をしておくと診察がスムーズです。 いざ採尿という時に困らないよう、どの方法が猫ちゃんに合っているか試しておくといいでしょう。
慢性腎臓病をはじめ、その他様々な病気の治療のために、ご自宅で皮下点滴を頑張っていらっしゃる方も多いと思います。同じ皮下点滴でも、処方されるセットは動物病院によっていろいろです。 今日は皮下点滴のセットを3種類ご紹介します。もし今、皮下点滴に関する困りごとがあれば、処方してもらうセットを替えることで解決するかもしれません! ①一番よくみる、シンプルなセット ①一番よくみるシンプルなセットです メリット:操作がシンプル、コストが安い デメリット:時間がかかる(←加圧バックを使うと早くなる)、入れる量がアバウトになる、輸液を吊るす場所が必要 ② ①のセット+三方活栓とシリンジ ② ①のセット+三方活栓とシリンジ メリット:①より時間はかからず、入れる量が正確、コストが安い、場所を選ばない デメリット:慣れるまで操作が煩雑←点滴中に動く子だとひとりでは難しいかも… ③50㎖のシリンジと翼状針 ③50㎖のシリンジと翼状針 メリット:短時間で済む、入れる量が正確、場所を選ばない デメリット:コストがかかる 私は往診先ではいつも③で処置しています。みんな処置時間が長いと嫌になってしまうので。。 毎日のことですから、お互いにストレスの少ない方法がみつかりますように!
かかりつけ動物病院に通院しているけど、負担を減らすため往診でできることは往診でお願いしたい、という方は増えています。 持病を抱えている子や高齢の子、病院が苦手な子は、うまく病院を併用できるといいですよね。 複数の病院にかかるとき、気をつけなければいけない事があります。 まずひとつ目は、病状を正しく説明できるようにしておくこと。 ふたつ目は、服用しているお薬について正しく説明できるようにしておくこと。 初診時には、この2項目(既往歴と服薬歴)について獣医師から質問されることが多いです。 うちの子の病気やお薬について説明できますか? 知っておくべきポイントについて確認していきましょう。 既往歴について ①いつから? 何歳の頃から症状があるのか、いつから治療しているのか、時系列で説明できるようにメモを残しておきましょう。 ②何の検査をした? いつ何の検査を受けたかメモを残しておきましょう。胸のレントゲン検査をした、お腹の超音波検査をした、頭のMRIを撮った、など。 血液検査、と一言で言ってもたくさんの項目があります。一般生化学検査、猫エイズウイルスの血液検査、副腎ホルモンの血液検査、など。 検査結果は紙でもらい保管しておきましょう。 ③診断名は? 診断が出ている場合は病名を聞きましょう。 肝臓が悪いと言われた、心臓が悪いと言われた、だけではおおまかな病状しか獣医師に伝わりません。 かかりつけ医に『この子の病名はなんですか?』と聞いておきましょう。 診察室で改めて聞きにくい場合は、受付などで看護師さんにお願いし、先生に確認してきてもらってもいいですね。 服薬歴について ①薬の名前は? 薬品名とmg数を聞いておきましょう。 錠剤のシートや薬袋に書いてある場合もあります。 分割錠や粉薬、シロップ剤などは書かれていない場合が多いので、受け取る際に確認しましょう。 同じ成分の薬でも、病院によって取り扱っているメーカー(商品名)が違う場合があります。 心臓の白い錠剤を飲んでいる、オレンジ色の粉薬を飲んでいる、などでは他院の獣医師には伝わりません。 ②いつから服薬してる? 薬の種類が増えてくると、どのお薬をいつから飲み始めたかわからなくなることがあります。 日付け入りの薬袋や明細を残しておきましょう。 病気や薬のことは、往診を依頼するときに限らず夜間に救急病院を受診する際にも必要な情報です。 いざ受診するときに慌てることがないよう、日頃からうち
ヒトの世界では良く聞かれるようになってきた「緩和ケア」という言葉をご存じですか? 緩和ケアは治療を諦めること、がんの末期で受けるもの、と思っている方もまだまだ多いと思います。 がんになると、がん自体の症状以外にも、痛み・倦怠感などの身体の不調や、落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛を経験するといわれています。これらの身体的・精神的な苦痛を和らげるのが緩和ケアです。ヒト医療ではがんと診断された時から、並行して行われるようになってきています。また、がん以外の慢性病にも、この概念が定着しつつあります。 緩和ケアのメリットは下記↓↓ ・病気を知り、治療の選択を助けること(←ペットの場合、ご家族の選択) ・身体を楽にすることで日常を取り戻す、がん治療に取り組みやすくなる ・心の辛さを和らげることで前向きになる(←ペットの場合、ご家族が前向きになることで空気察知する能力の高いペット自身の不安が少なくなる) 動物も同じです。緩和ケアは諦めることではなくて、その子がその子らしく毎日を過ごすために必要なことです。 がんでも、その他の治らない病気でも、闘病中に身体は楽なほうが良いし、できる限り好きなことをして過ごしたいし、家族が辛い顔をしている時間が少ないほうが良い。大好きなおうちに居られる時間が長いほうが良い。 往診は、ご自宅に伺うので、ペットの生活環境について気付けることが多い・飼い主様が質問しやすい環境・通院ストレスがない、などのメリットがあります。闘病中のペットと暮らす皆様の、力になれるかもしれません。困りごとがあれば、ぜひご相談ください! ※写真は鼻腔内リンパ腫で闘病中の猫ちゃん。毎日大好きなマグロを食べ、お気に入りの洗面台で水を飲み、マイペースにおうちで過ごしています!!
人馴れしていない保護猫ちゃんの診察ってどうしてますか? 念願叶ってついに保護猫ちゃんをおうちに迎えることができ、この子を絶対幸せにするぞ!と心に誓って数ヶ月。 ようやく家に慣れてきてくれたころ、なんだか様子がいつもと違う?もしかして具合悪いのかな? まだ完全に心を許してくれた訳ではないのに、抱っこや触ることも難しいのに、どうやって動物病院へ行くか悩みますよね。 そんなときはやはり往診が便利ですね。 便利ですが、当然獣医師のことなんてもっと信用していない訳で(動物好きなのに嫌われる運命・・・泣) 簡単には診せてくれませんので、慎重に行わないといけません。 とにかく嫌がることはしない、ストレスを与えない!これが鉄則です。 依頼を受けたらまず、保護猫ちゃんの飼育歴や家での過ごし方を詳しく確認します。 保護された時の状況や時期は?どのくらい慣れてきたのか? 普段からケージに入っているのか?お部屋は猫ちゃん専用のお部屋なのか? 1番困るのは、ご自宅へお伺いしても、廊下や家具の間に隠れてしまって、姿さえ見えないこと。 なので、見えないところに隠れてしまう子は、獣医師が来る前に診察できそうな場所に移動してもらいます。 家全体の行き来を自由にしている場合は、入ってくれるケージがあればそこで待機。 ケージに入ってくれない場合は、できるだけ物がなく狭めのお部屋に移動してもらいます。 扉で仕切れる廊下スペースや洗面所を片付けて、そこで診察させてもらうこともあります。 もし移動させる事が難しいようならば、無理せず普段の様子をそのまま診させてもらいます。 診察の際は、飼い主さんのお話を伺いつつ、少し距離を取ってそっと様子を観察します。 いきなり触ろうとすることは絶対ありません。 様子を観察するだけでもわかることは色々あります。 体格や被毛の艶などから栄養状態はどうか。 呼吸のし方や歩き方におかしなところはないか。 皮膚炎がないか、目ヤニやヨダレなど汚れているところはないか。 こちらの動きに対する目や耳の反応はどうか。 シャーっと言って口を開けてくれたら、粘膜の色も見ます。 また、排泄物や汚れなども重要なヒントになるのでトイレもよく確認します。 最後に、猫ちゃんが落ち着いていれば、声をかけ、そっと撫で、聴診器を当てます。 これだけでは情報として十分ではないかもしれません。 検査や注射などできないことも多々あります。 しかしここで無理やり何かしようと追い回してしまうと余計に恐怖心を与えかねません。 触れなくても、猫ちゃんはちょっとずつヒントをくれています。 その僅かなヒントを見逃さないこと。 そして、飼い主さんの「気づき」を手がかりに対処法を考えていきます。 常日頃から観察をすることがとっても大事ですね。 このように基本的には無理のない範囲で診察を進めていきますが、患部から出血しているなどどうしてもその子に何かをしないといけない場合もあります。 その場合は、飼い主さんの了承を得て鎮静剤を使用することもあります。 通院が難しい保護猫ちゃんたちですが、そんな時はぜひ往診専門動物病院をご活用ください。 お写真は、先日お伺いした保護猫のリリちゃん。 保護する前はこちら。↓ 今と表情が違いますね。 いつか、なでなでさせてくれるようになるといいなぁ。
先日、往診獣医師協会主催で阿部美奈子先生にグリーフケアのセミナーを行っていただきました。 グリーフケア…恥ずかしながら、ペットが亡くなった後の、飼い主様に対するペットロスのケアだと思っていました…。私が今回の気づきで印象的だったのは下記です。 グリーフとは「喪失によっておこる心と身体の反応」 ・ペットが生きているときから人間におこる →病気による当たり前の毎日の喪失、もしこの子がいなくなったらと喪失の予期など ・ペットにも人間同様グリーフがおこる →病名・検査結果を聞いて飼い主様が悲しそう=なんだかとても不安 飼い主様が泣いたり辛そうな顔をする時間が増えた=安心な当たり前の毎日の喪失 言葉を話せないからこそ、空気を読み取る才能に長けているペットたち。 人間同士が話し合う、雰囲気や表情、言葉のトーンなどに私たちが思っている以上に不安を感じるんですね。今まではペットたちの痛みや苦しさを軽減することに重きを置いてきましたが、プラスして、ペットが安心して生活できる空間を、飼い主様とともに作り上げることも意識していこうと感じさせられました。こういう面においては、ご自宅に入って診療をさせていただいている往診獣医師はお力になれることが多いですね! とても大きな気づきをいただいた貴重なセミナー時間でした。 阿部美奈子先生のご活動・ご活躍についてはこちらから↓↓ https://grief-care.net/