ヒトの世界では良く聞かれるようになってきた「緩和ケア」という言葉をご存じですか? 緩和ケアは治療を諦めること、がんの末期で受けるもの、と思っている方もまだまだ多いと思います。 がんになると、がん自体の症状以外にも、痛み・倦怠感などの身体の不調や、落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛を経験するといわれています。これらの身体的・精神的な苦痛を和らげるのが緩和ケアです。ヒト医療ではがんと診断された時から、並行して行われるようになってきています。また、がん以外の慢性病にも、この概念が定着しつつあります。 緩和ケアのメリットは下記↓↓ ・病気を知り、治療の選択を助けること(←ペットの場合、ご家族の選択) ・身体を楽にすることで日常を取り戻す、がん治療に取り組みやすくなる ・心の辛さを和らげることで前向きになる(←ペットの場合、ご家族が前向きになることで空気察知する能力の高いペット自身の不安が少なくなる) 動物も同じです。緩和ケアは諦めることではなくて、その子がその子らしく毎日を過ごすために必要なことです。 がんでも、その他の治らない病気でも、闘病中に身体は楽なほうが良いし、できる限り好きなことをして過ごしたいし、家族が辛い顔をしている時間が少ないほうが良い。大好きなおうちに居られる時間が長いほうが良い。 往診は、ご自宅に伺うので、ペットの生活環境について気付けることが多い・飼い主様が質問しやすい環境・通院ストレスがない、などのメリットがあります。闘病中のペットと暮らす皆様の、力になれるかもしれません。困りごとがあれば、ぜひご相談ください! ※写真は鼻腔内リンパ腫で闘病中の猫ちゃん。毎日大好きなマグロを食べ、お気に入りの洗面台で水を飲み、マイペースにおうちで過ごしています!!
人馴れしていない保護猫ちゃんの診察ってどうしてますか? 念願叶ってついに保護猫ちゃんをおうちに迎えることができ、この子を絶対幸せにするぞ!と心に誓って数ヶ月。 ようやく家に慣れてきてくれたころ、なんだか様子がいつもと違う?もしかして具合悪いのかな? まだ完全に心を許してくれた訳ではないのに、抱っこや触ることも難しいのに、どうやって動物病院へ行くか悩みますよね。 そんなときはやはり往診が便利ですね。 便利ですが、当然獣医師のことなんてもっと信用していない訳で(動物好きなのに嫌われる運命・・・泣) 簡単には診せてくれませんので、慎重に行わないといけません。 とにかく嫌がることはしない、ストレスを与えない!これが鉄則です。 依頼を受けたらまず、保護猫ちゃんの飼育歴や家での過ごし方を詳しく確認します。 保護された時の状況や時期は?どのくらい慣れてきたのか? 普段からケージに入っているのか?お部屋は猫ちゃん専用のお部屋なのか? 1番困るのは、ご自宅へお伺いしても、廊下や家具の間に隠れてしまって、姿さえ見えないこと。 なので、見えないところに隠れてしまう子は、獣医師が来る前に診察できそうな場所に移動してもらいます。 家全体の行き来を自由にしている場合は、入ってくれるケージがあればそこで待機。 ケージに入ってくれない場合は、できるだけ物がなく狭めのお部屋に移動してもらいます。 扉で仕切れる廊下スペースや洗面所を片付けて、そこで診察させてもらうこともあります。 もし移動させる事が難しいようならば、無理せず普段の様子をそのまま診させてもらいます。 診察の際は、飼い主さんのお話を伺いつつ、少し距離を取ってそっと様子を観察します。 いきなり触ろうとすることは絶対ありません。 様子を観察するだけでもわかることは色々あります。 体格や被毛の艶などから栄養状態はどうか。 呼吸のし方や歩き方におかしなところはないか。 皮膚炎がないか、目ヤニやヨダレなど汚れているところはないか。 こちらの動きに対する目や耳の反応はどうか。 シャーっと言って口を開けてくれたら、粘膜の色も見ます。 また、排泄物や汚れなども重要なヒントになるのでトイレもよく確認します。 最後に、猫ちゃんが落ち着いていれば、声をかけ、そっと撫で、聴診器を当てます。 これだけでは情報として十分ではないかもしれません。 検査や注射などできないことも多々あります。 しかしここで無理やり何かしようと追い回してしまうと余計に恐怖心を与えかねません。 触れなくても、猫ちゃんはちょっとずつヒントをくれています。 その僅かなヒントを見逃さないこと。 そして、飼い主さんの「気づき」を手がかりに対処法を考えていきます。 常日頃から観察をすることがとっても大事ですね。 このように基本的には無理のない範囲で診察を進めていきますが、患部から出血しているなどどうしてもその子に何かをしないといけない場合もあります。 その場合は、飼い主さんの了承を得て鎮静剤を使用することもあります。 通院が難しい保護猫ちゃんたちですが、そんな時はぜひ往診専門動物病院をご活用ください。 お写真は、先日お伺いした保護猫のリリちゃん。 保護する前はこちら。↓ 今と表情が違いますね。 いつか、なでなでさせてくれるようになるといいなぁ。
先日、往診獣医師協会主催で阿部美奈子先生にグリーフケアのセミナーを行っていただきました。 グリーフケア…恥ずかしながら、ペットが亡くなった後の、飼い主様に対するペットロスのケアだと思っていました…。私が今回の気づきで印象的だったのは下記です。 グリーフとは「喪失によっておこる心と身体の反応」 ・ペットが生きているときから人間におこる →病気による当たり前の毎日の喪失、もしこの子がいなくなったらと喪失の予期など ・ペットにも人間同様グリーフがおこる →病名・検査結果を聞いて飼い主様が悲しそう=なんだかとても不安 飼い主様が泣いたり辛そうな顔をする時間が増えた=安心な当たり前の毎日の喪失 言葉を話せないからこそ、空気を読み取る才能に長けているペットたち。 人間同士が話し合う、雰囲気や表情、言葉のトーンなどに私たちが思っている以上に不安を感じるんですね。今まではペットたちの痛みや苦しさを軽減することに重きを置いてきましたが、プラスして、ペットが安心して生活できる空間を、飼い主様とともに作り上げることも意識していこうと感じさせられました。こういう面においては、ご自宅に入って診療をさせていただいている往診獣医師はお力になれることが多いですね! とても大きな気づきをいただいた貴重なセミナー時間でした。 阿部美奈子先生のご活動・ご活躍についてはこちらから↓↓ https://grief-care.net/